単騎でグランプリを初制覇
「近畿が1人になって心細かったんですけど、近畿の選手として恥ずかしくない走りができればと思ってました」
単騎でのグランプリ。関東勢は3車で強固な布陣。中国コンビは3年連続での連係になり、郡司浩平には北日本勢が付いて3車のラインができあがった。ただ、古性優作は攻める気持ちを失ってはなかった。
「自分の力はどんなもんかと思って一生懸命、仕掛けました。脇本(雄太)さんのおかげG1を獲らせてもらったけど。自分の力でも獲れるって証明したかった」
初戴冠となった8月のオールスターでは、脇本が先行策で別線を完封。番手を回った古性が差し切った。「近畿のラインに助けられた1年だったなと思います」と、グランプリ前に今年を振り返った。それだけに1人で初のグランプリは、近畿勢の代表として、すべてを背負う覚悟だった。
「近畿勢の先輩方もみんな連絡をくれました。そのプレッシャーを楽しんで走るのは、二流選手だと思ってます。そのプレッシャーをしっかり背負って走れたので、近畿勢のみなさんに感謝したい」
上昇した清水裕友を阻んだ郡司が、関東ラインの3車を受ける。関東勢に続いた古性は郡司と一瞬、重なったものの、郡司が下げて単独で4番手をキープした。妥協を許さない古性の一戦、一戦の積み重ねが生んだポジションだった。逃げる吉田拓矢の番手から宿口陽一がまくりに出るとほぼ同じタイミングで、古性が踏み込む。これ以上ないタイミングは、12年、憧れの村上義弘が単騎でグランプリを初めて獲ったあの時と姿が重なった。
「(最終)ホーム前はいい感じで間合いが取れてたんですけど、ちょっと詰まりすぎてしまった。詰めすぎてしまったのでヤバいなと思った。だけど、とにかくここしかないかなと思って、1センターくらいから思い切りいきました」
番手まくりの宿口陽一を最終3コーナーでのみ込むと、後続の影はない。それでも18、19年と記念を制覇している静岡バンクの直線は長く感じた。
「なんで(ゴールが)来えへんのかなって。すごくファンのみなさんの応援があって、直線長かったんですけど。すごく声が聞こえてきた。なんにか不思議な感覚だった。本当にファンのみなさんに感謝したいです」
終わってみれば2車身差の完勝だった。ゴールした古性が、ファンに両手が上げてアピール。大阪から初のグランプリ王者が誕生した。
「来年は自分の力で、いっぱい近畿勢がグランプリを走れるように。自分がしっかり頑張っていきたいなって。デビューした時からグランプリを見てきましたし、まさか獲れるとは思っていなかった。来年は(グランプリチャンプの)1番車に恥じないようなレースで、しっかり近畿勢を引っ張っていける選手になりたい」
“ひとりじゃない”。近畿に育まれ賞金王に就いた古性は、これからも計り知れないプレッシャーから逃げることなく、仲間ともに歩んでいく。
関東3番手の平原康多は、宿口をピタリとマーク。単騎の古性にスイッチすることなく清水を張って直線で追い込んだ。
「悔しいですけど、出し切って負けた。宿口もやることやってくれましたし、あの上を行かれた。自分があの上を行くわけにはいかないですし、古性が強かったですね」
最終バックではコースがなかった郡司浩平は、外の松浦悠士を弾くも中のコースを踏んだ。
「古性君はヨコが強いですし、あそこ(4番手)でやっても仕方ないですからね。やるなら(吉田の)番手でって思っていました。古性君もサラ脚でしたし、まくっていくだろうと思ったんですけど。清水君に締められて苦しくなりました。1着を取るためにレースをつくらないといけなかったですし、ラインとしても優勝を狙える仕掛けができなくて悔しい」