佐藤慎が今年早くも記念V2
会見場に現れた佐藤慎太郎は、開口一番、前を任せた平原康多への想いを口にした。
「もうちょっと自分に余裕があれば、平原とワンツーを決められた。平原クラスの選手が、あれだけ風を切ってくれて、残せずに申し訳ない気持ちが強いです。自分が勝たないといけないって選手が、俺のことも考えたレースをしてくれたっていう気持ちが嬉しい」
これまでビッグレースの舞台でも何度も連係してきた両者。超一流同士の、地区の垣根を超えた絆がある。それだけに、先行した平原を2着に残したかった。
「(和田)真久留を目標にして、誰かがまくってくるんじゃないかって思っていた。そしたら結構なスピード差になるし、焦って踏んでしまった。内もうかつには空けられなかったので。冷静になれば、ワンツーを決められる態勢を作れたと思う。記念の決勝でそれぐらいの余裕がないと、これより上では厳しいと感じている」
初日特選は古性優作、準決、決勝は平原の番手を回った。同地区の機動型に任せたのは、二次予選の一度だけ。与えられたメンバーの中で、勝つために常に最善の選択をしてきた。そのなかで、決勝戦は平原が気持ちの入った先行策に出た。再三、佐藤が仕事をして、地元勢を阻んだ。平原の気持ちに応えたいという想いが、地元勢の意地に勝った。
「このレースを見て、北日本の自力が発奮してくれたらいいね。他地区の自力じゃなくて、自分たちがこれをやらないとって思ってほしい」
北日本勢に奮起を促したのは、地区全体の先を見据える佐藤だからこそだろう。終わってみればオール連対。シリーズ3勝を挙げて、2月静岡記念以来のG3優勝。デビューから四半世紀あまりが経った今でも、その輝きは増すばかりだ。
「記念をなかなか勝てない時期もあった。そのなかでもトレーニングとか、レースに臨む姿勢だったりっていうのが、間違ってなかったって思える。新しい練習があれば取り入れるし、守る感じではないね。挑戦していきたい」
佐藤が最前線で戦い続ける限り、漢字の競輪が衰退することは決してない。
2着に入ったのは古性優作。後手を踏まされる苦しい展開のなかで、直線では山田庸平と火花散るデッドヒートを演じた。
「まさか(初周で関東勢が南関勢を前に)入れると思わなかったので。郡司(浩平)君が後ろ攻めかなって思ったんですけど、入れた時点で難しかったですね。でも、チャンスはいっぱいありましたし、1コーナーでいこうと思ったんですけど、平原さんの掛かりがすごくていけなかったですね。2コーナーもいったんですけど、出なかったです。結局、初日が一番よかったですね。今日も(体と自転車の)一体感がなかったです」
レースをメイクしたのは平原康多だ。久しぶりの先行策で佐藤の優勝に大きく貢献。清々しい表情で振り返った。
「想定外のスタートになりましたね。前か前中団っていうのは考えていたんですけど。(打鐘で切る時に)あのペースでいって、来たら出させてって思っていたんですけど、遅かったので。スイッチが入りましたね。(佐藤)慎太郎さんといいレースができたと思う。あれで逃げ切れれば脇本(雄太)にも勝てるんでしょうけど、ダメでした。でも、慎太郎さんの優勝は自分の優勝みたいなものなので」