昨年の流れ断ち切り、Vスタート
S級S班の昨年は思うような成績を残せずに「フラストレーションのたまる1年だった。良くなってきたら、また落ちての繰り返しだった」と、前検日に振り返っていた。その1年を象徴するように、24年のラスト走は落車で終わった。
「すごい久々な感じがするんでうれしいです」
一昨年7月、名古屋以来のG3制覇、優勝からも同年の10月の川崎F1から遠ざかっていた。それだに久しぶりの美酒は、ひとしおに違いない。
「(藤井)侑吾さんがチャンスをつくってくれて、それをモノにできた」
敢然と突っ張り先行に出た藤井が、絶好の展開を演出。訪れたチャンスを抜かりなくつかみ取った山口拳矢が、藤井への感謝を口にする。
「侑吾さんが一番走りやすいようにっていう感じでした。(スタートで)前を取らされて、突っ張るか引くかは状況次第でした。(藤井が)なんとなく突っ張るのは、雰囲気で感じたので邪魔しないようにと」
取鳥雄吾を阻んで後続を一本棒にした藤井は、打鐘2センターからさらに加速して逃げる。が、無傷で勝ち上がっていた郡司浩平が、脚を使うことなく4番手にいた。
「侑吾さんがスピードを緩めなかったんで、このペースで駆けていくんだろうと。それで変に慌てることはなかった。ただ、確認した時には(郡司が)真後ろくらいにいた。それでなにもできずに踏んじゃった」
郡司のまくりに合わせて、ちゅうちょなく番手発進。結果的にはその判断が功を奏した。
「侑吾さんには優勝で応えることが最低限でした。自分は本当にタテに踏んだだけです。(郡司に)最後は迫られているんで、やっぱり強いなって感じでした」
直線で再び詰め寄る郡司を4分の3車輪、振り切ったところがゴール。今年最初のグレードレースを制して、落車で終わった昨年の悪い流れを断ち切った。
「自分の成績とかをいったん忘れて、ゼロからつくり直していきたいっていうのが今年の目標。(今年は)一昨年以上の成績って考えていたんで、G3をもう1個とやっぱりタイトルを獲りたい。(このあと)F1戦が始まるので自信を取り戻しつつ、仕掛ける勘を取り戻せたら」
S級S班返り咲きのためのスタートダッシュとしては、これ以上ない新春のシリーズ。タイトル奪取への足がかりには十分だろう。
4番手で脚をためた郡司浩平は、最終2コーナー手前からまくりを打つ。しかしながら、3コーナーに入る前に山口に並ぶことができず、いったん山口後位に降りて直線勝負に持ち込んだ。
「(突っ張りではなくて)藤井も獲りにいくような感じで、1周カマシかなって。突っ張ってあんなにやるとは思ってなかった。(最終)4コーナー過ぎから藤井が踏み出したんで、その前からタイミングを取っていた。(ラインが)2車だったし、いい位置を取れすぎたのが敗因ですね。(最終)ホーム、1コーナーで外に持ち出したかったけど、そこが一番掛かっていて2コーナーまで待つしかなかった」
単騎の平原康多は、南関コンビを前に見る6番手で最終ホームを通過。2センターでは内から岡村潤を弾いて追い込むも、3着がいっぱい。
「初手は中団からと考えていたけど、前を取らされそうになった。それだと厳しいので、そうならないようにと。藤井君が(突っ張って)駆ける気とは思っていなくて想定外でした。(藤井が)突っ張ってからは、園田(匠)さんに削られないように注意していた。前検日の感じのわりにはやれた方だと思います」