タイトルにつなげるまくりV
深谷知広
乗れている茨栃コンビは、2日目の「毘沙門天賞」とは逆の並び。吉田拓矢が先頭を務めて、眞杉匠が番手。山崎賢人は単騎になり、深谷知広の先行1車に近いメンバー構成という“下馬評”もあった。が、深谷自身はあくまで冷静。周囲に惑わされることはなかった。
「関東勢の積極策があると思っていた。(吉田が)流していれば(自分が叩いて)先行。(吉田が)駆けていけば、(自分が)まくりという判断で落ち着いてはいました」
赤板で茨栃コンビが出ると、吉田はそのまま緩めることなく、ピッチを刻んで風を切る。地元の清水裕友が3番手に飛び付いて、単騎の古性優作が5番手。自力を備えた番手の眞杉、前々に攻める清水、古性を前に見る6番手は、前受けから引いた深谷にとっては、決して悪いポジションではなかった。
「(スタートで)前を取れるとは思っていなかったんですけど、小原(太樹)さんが(スタートは)早いですし、そこはいつも任せている。前の方を取れればやりやすいかなと」
打鐘では前の古性と車間を空けてタイミングを取った深谷は、単騎でも仕掛ける古性の動きを読み切ってその時を待った。
「(古性は)最後まで仕掛けないという選手ではないですし、そこは少し頼って見ていました。(古性に)ピッタリ付いて行くよりは、自分の間合いを取って行けた」
最終ホーム手前から古性が踏み出し、最後方から山崎も同じようなタイミングで反撃。深谷は、山崎にかぶる前のギリギリのポイントで踏み出した。
「(後ろから単騎の山崎のまくりがきていたが)踏み出した時に(後ろで)音がしたんで来たなって。結果的にいいタイミングだった。(まくりの伸びは)自分でも信じられないくらい出ました」
古性に合わせて満を持した眞杉が番手まくり。しかしながら、深谷の加速が断然。2人をあっさりと乗り越えて、3コーナー過ぎには決着がついていた。
「(優勝の手ごたえは最終3コーナーを過ぎて)眞杉を越えられたところで、あとはゴールまでと」
マーク小原は付け切れない。がむしゃらにゴールを駆け抜けた深谷は、気づけば2着の眞杉に3車身の差をつけていた。
23年9月の共同通信社杯以来のビッグ制覇。昨年はウエートトレーニングで痛めたヒザ痛に泣かされたが、試行錯誤でようやくここまでたどり着いた。
「まだウエートトレーニング自体はできないんですけど、(昨年痛めた)ヒザを気にせず自転車に乗ることができている。(ウエートトレーニングは)やれそうな手ごたえはあるんですけど、一度(ヒザを痛めて)失敗してるんでちょっと様子を見て、パワーアップもしていかなければって思います」
2年半ぶりのG2優勝だが、タイトルは14年の寬仁親王牌から遠ざかっている。
「もちろんこの先にG1があるし、ここが最終目標ではない。最近は先行の壁というのも実感している。(戦法に)幅をもたせつつ、そのなかでしっかりと先行を見せたい」
まくり一撃でのビッグ制覇。平成の怪物、深谷は令和になっても進化し、自身の変化をしっかりと受け止めている。
吉田が積極的に駆けて、眞杉匠には絶好の流れ。番手まくりを打ったが、深谷のスピードが違った。
「(吉田が)仕掛けて主導権を取ってくれたのに、(それに)応えられなくて悔しい。雨で(状況が)全然、見えなかったです。古性さんが来ていたのはわかって、横にいるのもわかったけど、それ以外はわからなかったです」
3番手を確保した地元の清水裕友は、眞杉の番手まくりを追っての3着まで。
「スタートはミスしました。でも、展開的には良かった。ちょっと絶好の位置が取れたんですけど。眞杉君も出る感じじゃなかったですし、その上を深谷さんに行かれてしまった。(地元で)すごい声援だったので、うれしかったんですけど、結果を出せず申し訳なかったです」