迷いなく踏み込んで初戴冠
犬伏湧也
23年の日本選手権から数えて、通算8回目のG1ファイナル。ゴールを先頭で駆け抜けた犬伏湧也が、念願のタイトル奪取に右手を挙げてファンに応えた。
「(優勝は)夢のようですね。まだ実感がわかない。(G1で)いままで決勝には上がっていたんですけど、全然、結果としては残せていなかった。今回は決勝に四国の4人が上がれて、そのおかげかなと。(ここまで優勝ができなくて)もどかしいし、悔しかった。もっとできると思いながら、日々練習してきて、やっと実現できた」
ファン投票14位で「オリオン賞レース」からシリーズをスタートさせた犬伏は、寺崎浩平の踏み出しに遅れ気味の阿部拓真をさばいて、石原颯からスイッチ。まくりを敢行して白星を挙げたオリオン賞を見た師匠の小倉竜二(77期)も、犬伏の変化をハッキリと感じ取っていた。それだけに獲るべくして獲った今シリーズでもあっただろう。単騎の4日目「シャイニングスター賞」こそ、清水裕友の強烈なブロックで7着に敗れたが、準決では先行策で地元の松本貴治とともに優出。四国4人で結束した決勝は、前回のサマーナイトフェスティバルの決勝と同じく石原颯の番手だった。
「(眞杉匠ラインに出られたあと)石原がどうするのかと。決め打ちをせずに柔軟に立ち回れたんですけど、打鐘のところで石原と連係が乱れた。(打鐘前2コーナーあたりで古性優作が分断するような動きを見せて)そういうのがあって僕も遅れた。けど、石原がしっかり踏み込んでいったところで、古性さんの反応が少し遅れていた。そこをしっかり追い上げて、石原のスピードをもらってまくりに行った」
眞杉、吉田拓矢のS級S班コンビに、単騎ながらもG1の3連覇がかかっている古性がいて、一筋縄ではいかなかった。4車のラインを生かして突っ張りの思惑だったが、赤板過ぎに眞杉に出られた石原が下げる。四国勢と一緒に古性も減速して、番手の犬伏に照準を定めていた。が、結果的には腹をくくった石原のレース運びが、古性の切り替えを誘った。先行した眞杉に、6番手の石原が打鐘2センターから襲い掛かる。最終1センター付近で古性を乗り越えたが、今度は石原に合わせて吉田が番手まくり。犬伏は一瞬の迷いもなく、石原の外をまくった。
「(石原の追走は)踏み出しはキツかったんですけど、(最終)ホームからは流れた。あとはしっかり踏み込むだけかなと。(吉田が番手まくりに出て)上りだったので行けるかどうかわからなかったんですけど、最後は目いっぱい踏むだけでした」
3コーナーであっさりと吉田を抜き去ったものの、松本が連結を外して、付け直した吉田との直線勝負。最後は4分の3車身差と確信のゴールだった。
昨年は北井佑季がS班を除外されて、4月からS班に繰り上がった。しかしながら、今年は、犬伏が自らの手でS班をつかみ取った。S班を経験しながらも、今年の年末のグランプリが初出場になるのは異例だろう。
「いつもなら中四国は、ラインが少ない状況で戦うことが多かった。けど、(今シリーズは清水)裕友さんもいて、四国が4車も勝ち上がった。勢いがあって、自分がそこでもっともっと引っ張っていきたいなと思います。まだグランプリまで時間があるので、中四国が1人でも多くグランプリに出られるよう、自分がしっかり連れていきたいなと思います。やっと正真正銘のSSになれるんだと。(師匠の小倉以来となる徳島勢のタイトル獲得)小倉さんのあとに自分が獲れたというのが感慨深いですし、小倉さんの次で良かった」
小倉が優勝した06年1月の競輪祭以来、四国勢からのタイトルホルダー。長きにわたり四国地区を支えてきた師匠の目の前での初戴冠は、新たな時代の幕開けでもあり、ニューリーダーの誕生でもある。
先行した眞杉の番手から自力に転じた吉田拓矢が2着。
「(四国勢に)すんなり行かれると、難しくなるなかで眞杉がレースをつくってくれた。(打鐘で)眞杉は(先行の)腹をくくった感じでした。石原君は止まると思ったけど、その上を行った犬伏君が強かった。僕の車も出ていなかったです」
栃茨勢の後ろを固めた守澤太志が、吉田に食らいついて3着。
「眞杉君がすごく掛かっていた。その上を来た石原君も強かったし、さらに上を行った犬伏君はもっと強かった。自分は吉田君の後ろで余裕はなかったです。ちょっとちぎれ気味だったので、なんとかです」