ピックアップ GⅠ 松山 08/11

人生と同じでどう転ぶかわからない。だからこそ競輪はおもしろい。そんなことを体現してくれた犬伏湧也の初戴冠だった。決勝はラインの松本貴治がダッシュ良くスタートを飛び出して、4車の四国勢が前団を占める。四国勢の思惑はラインの厚みを生かして、そのまま突っ張り先行だった。が、眞杉匠に切られて、突っ張りは水泡に。さらにG1の3連続優勝がかかっていた単騎の古性優作が、四国勢の後退に合わせて下げて、石原颯の番手、犬伏に照準を定める。古性にとって想定外だったのは、石原の急激な減速。四国分断策をあきらめた古性が5番手に切り替えて、石原の一撃が生きる流れに。「バラバラになった時に、逆にチャンスだなと思った」と、犬伏の師匠の小倉竜二も振り返ったように、予想だにしていない展開が犬伏に勝機を生んだ。
番手まくりに出た吉田拓矢に合わされた石原が不発も、その上を猛然とまくった犬伏が優勝。「今年に入って、体がひと回り大きくなった。あのパワーはどうやったら出るのかと。踏む前の加速段階でどんどん掛かっていくんですよね。それがもう一段ギアが上がった感じですね。不器用さがあっても、力でねじ伏せた。力だけで技術を上回った」とは、前述の小倉。犬伏のパワーがあってこそ成せる優勝でもあったが、はたして、シナリオ通りに四国勢が突っ張って主導権を握っていたら…。
自転車経験のない犬伏は、養成所を3度目の受験で合格。平たんな道のりでなかったことは想像に難くなく、2度のGI制覇の実績を持つ小倉でさえ、「(試験を)2回、落ちたあと一度(選手になるのを)あきらめた。貧乏生活を経て(競輪選手になって)、こうなるなんて想像もつかなかった」と、当初の愛弟子に思いを馳せた。その師匠の06年1月の競輪祭以来となる四国勢としては、約20年ぶりのタイトル奪取。昨年は北井佑季のS班除外で、4月からまさかのS班繰り上がり。“何が功を奏するかわからない”。これからも犬伏のサプライズを期待しつつ、まずは初めてのG1制覇を称えたい。

寺崎浩平
オリオン賞からスタートを切った寺崎浩平は、オリオン賞、二次予選と連続の8着でオールスター連覇の夢が早々に絶たれた。6月の高松宮記念杯の落車で右鎖骨を骨折。その影響が復帰場所の今シリーズにもあったようで、後半の2走はまくりで2勝。ファンの期待には応えたものの、「(どこが悪いのか)わからない感じだった。(3走目と比べてみても最終日は)ちょっとつかめていない。(今シリーズを振り返って)苦しかったですね」と、最後までその表情が晴れることはなかった。
「(3走目は松岡辰泰とかぶったところも)単純に判断が悪い。粘るなら粘ってしっかりと取り切らないといけないし、結果、引いちゃっているんで良くないです。(まくりにいった感触は)全部、めちゃくちゃ悪いですね。(二次予選のあと)2日間、休みっていうのもしんどかった。(今シリーズは)もっとやれるかなって自分のなかで期待感があった。でも、練習との感覚のズレがある。ちょっとした感覚の違いが、行きどころでいけなかったりしている。それが二次予選でもろに出た。(骨折した)鎖骨の方は全然、良くないです」

岩本俊介
岩本俊介はシリーズを5走して、2勝2着1回の3連対。そのうちの2回が先行策でラインでの上位独占。8月22日からの地元、松戸記念につながる内容だった。
「(3走目の1着は)隠れてカマしちゃおうかなって思ってたんですけど、(市田龍生都に)力で跳ね返されました(笑)。(打鐘過ぎは)立ち遅れたら、このバンクは間に合わないだろうと。(市田の仕掛けに)合っちゃったけど、(番手に)はまれてラッキーでした。早めに(市田の後ろに)はまれたので、脚もすぐに回復した。一次予選がダメだったけど、脚は久しぶりに感触が良かった。それでいい着が連続した。(最終日は)5走目なのでギリギリですけど、みんな条件は同じですから。先行で2回残れているし、このメンバーのなかですから収穫はありましたし、自信になりました。変えたとかはなくて、練習の積み重ねですね」

橋本強
18年の当所ウィナーズカップでビッグ初優出を果たした橋本強は、41歳で地元の大舞台を迎えた。前回の小田原記念最終日の落車から中5日ではあったものの、4度の確定板入りと力を振り絞った。最終日は、太田海也の10秒7のまくりにちぎれながらも食らいついて責務を全うした。
「(最終日は打鐘)4コーナーから(太田)海也はいつでも(仕掛けて)行ける感じがあった。自分は踏み出しだけ集中していました。初速のところは付いていけてたんで、その分、佐々木(悠葵)君を乗り越えられた。なんとか2着をキープできて良かったです。海也が強いんで、自分は脚がないだけです。僕にとっては、最初で最後の地元G1かなと思って臨んだ。準決でさばかれたのは悔しいけど、やれることは精いっぱいやりました」

取鳥雄吾
ロングまくりの一次予選では、松本貴治の1着に貢献するワンツー。2着権利の狭き門の準々決勝Bでは、先行策でチャンスメイクして橋本強を白星で送り出した取鳥雄吾。最終日は、町田太我の番手から勝ち星をつかんだ。
「(最終日は)もう町田君サマサマです。(自分は齋木翔多の)前輪を払いにいきそうになってたんで、そこは気をつけないと。(番手で)僕に気持ちの余裕がなかった。そこだと思います。道場(晃規)君が来ているのもわかったんですけど、苦しそうだった。アベマサ(阿部)との勝負かなと。あれでマッチィ(町田)を残せたら最高だった。僕の技量不足です。(自力だったり、番手だったりをやりながら)そんなに器用じゃないので、かなり苦しいところはあります。けど、責任があるポジションを回って、あとは自分がどうやって成長できるかだと。そこから逃げずに頑張ります。間合いだったり、いろいろなことがあるので、松浦(悠士)さんだったり、清水(裕友)だったり、岩津(裕介)さんだったりと話しをして、もっともっといい形で決められるように頑張ります」