短期集中連載『ダービー王』最終回 ~村上 義弘(京都・73期)~後編

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村上義弘
村上義弘はこれからもファンの思いを乗せて走り続ける

 ~競輪の灯は決して消さない~。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため中止になった「第74回日本選手権競輪(G1)」の開催予定期間にお届けしてきた短期集中連載『ダービー王』は、今回がラスト。村上義弘(京都・73期)の前編「ダービー回顧編」に続き、後編「競輪への思い編」。ダービー優勝最年長記録を更新し、最多タイとなる4度のダービー王に輝いた村上が、人生をかけてきた競輪とは。

竹内祥郎記者

2020年5月10日 03時01分

この国難にこそ

 「心から競輪に感謝している。自分は競輪に人生を救われてきた。若い人たち、子どもたちにとって、(競輪選手が)夢のある職業になってほしい」
 先行日本一とうたわれ、00年ふるさとダービーでビッグ初制覇を飾った。02年には28歳で全日本選抜の初タイトルを獲得。競輪に魅せられた男は、見ている者を魅了し続けて45歳になった。通算634の勝ち星は、ファンの期待に応えてきたひとつひとつの積み重ねの結晶だ。
 「(新型コロナウイルス感染症で)みんなが目に見えない敵と闘って、社会全体が苦しんでいる。競輪は戦後の復興に役立ってきた。でも、この国難になんにも力になれない。レースを見ている人を元気づけることも、後輩たちを元気づけることもできない。競輪選手として自分にできることがなさすぎる」
 新型コロナウイルス感染症の影響で、ダービーをはじめとした開催が相次いで中止に追い込まれている。競輪を愛しているからこそのもどかしい思いが、村上の胸を突き上げる。
 「自分は日本選手権に出る権利がなかったけど。選手は前に向かって頑張ろうと思っている。だけど、それを発揮する場所がない。選手たちは応援してくれるファンにいままでよりも、もっといいパフォーマンスを見せられるように努力している。新型コロナウイルスの問題が終息して、選手たちが出られた時を(ファンには)楽しみにしていてほしいですね」
 1月の立川記念で失格の憂き目。その影響で開催されていたとしても、今年はダービー出場がかなわなかった。6月の四日市F1から復帰し、そのあとには地元地区の高松宮記念杯が待っている。
 「レースで(見せて)世の中の役に立ちたい。競輪で社会を元気にしたい。スポーツ選手なんで、周りを元気づけられる存在でありたい。競輪選手としての誇りだけは失わないように。できるトレーニングは限られているけど、気持ちだけは強くもっていく。高松宮記念杯に向けて、体をつくっていきたい」
 競輪に己の人生を注いできた村上は、どんな時も競輪でファンに勇気と力を与えていく。

竹内祥郎記者

2020年5月10日 03時01分

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