第60回 魅せられた吉岡選手のフォーム 2019年4月25日
競走訓練はレース数も増えると順位が気になります。俺は上位にいたけど納得いかない!それは福岡県の家具屋の息子で帰宅部の吉岡稔真選手の存在です。何でか分からないけど強いし無口。無口は相手からすると脅威だという事は彼から学んだ事です。そして学ぶといえば、群馬県に元競輪選手で鈴木保巳さんという名解説の方がいて、私はその方のアドバイスを参考にする事が多くありました。当時のギヤの主流は3・57、やはりシューズの踵は上げて高回転を出す乗り方を勧められてその通りにしていました。その方が回転の吹け上がりが良かったからです。海田和裕選手も山本真矢選手も古川圭選手も皆そうでした。
しかし、吉岡選手はお尻を後ろに引き、頭を低く流線形。横から見た乗車フォームは【つ】の字そのもの。非常に綺麗で力強く、とても進むのです。しかも驚いたのは踵が凄く下がり、俺たちとは真逆のペダリング。その踵だけは腑に落ちず、彼の踏み方やレーサーシューズを彼がいない時に触ったり、履いたり、匂いを嗅いだり(笑)したものです。彼は白い木底のデュージというメーカーを履いていて、そのシューズは靴底に特徴があります。靴幅が細く木底で反りがあり、つま先から踵へ向けてハイヒールの様に反りながら上がって行く創りになっているのです。アディダスという靴底がプラスチックで柔らかいシューズを履いていた俺たちには真似出来ない感覚でした。「あんな踵には負けない!」と言いながらも俺たちは彼の乗車フォームに魅せられていました。