10年ぶり、3度目のホーム記念制覇
大挙4車が勝ち上がった北日本勢は、先頭を務める嵯峨昇喜郎が赤板で飛び出す。しかしながら、合わせて動いた村上義弘が取ったのは分断策。嵯峨が主導権を握ると、番手の小松崎大地を村上が大きく外にもっていくが、小松崎もその位置は譲れない。競りの決着は簡単にはつかず、前団の隊列が凝縮されたまま打鐘を通過。柴崎淳(写真)がその時をじっと待った。
「ジャン過ぎに(仕掛けるタイミングの)1回目が来たけど、僕の航続距離じゃなかった。(2回目のタイミングの最終)ホーム過ぎ、あそこで一気に行かないと(ラインの浅井康太と)2人で決まらないと思った」
酸いも甘いもすべてが詰まったホームバンク。柴崎が仕掛けどころを逃すはずはなかった。初日、2日目に使ったフレームに戻した自転車も、柴崎の思いに応えてグングンと加速。最終バック手前で逃げる嵯峨をとらえて、浅井、単騎の諸橋愛が続く。勝負はこの3人に絞られた。
「(シリーズの)4日間で脚的には(決勝が)一番良かった。(初日から調子が)徐々に上がっていく感じだった。踏み出しも良かった。あとは(優勝は浅井と)どっちかと思ったら諸橋さんが来てた」
地元コンビの間を割って伸びる諸橋を半車輪しのいだところがゴール。四日市記念3度目のVは、気づけば08、09年に連覇した時から10年が経っていた。
「10年ぶりくらいですかね。あの時と気持ちはまったく違う。(優勝を)狙っていかないと、勝たないとっていうのがあったし、中部地区を盛り立てていかないとっていうのもありました」
その間に同門の浅井は3度のタイトルに、2度のグランプリを制覇。柴崎自身は昨年の競輪祭でようやく初のG1ファイナルの舞台に上がり、タイトルに手が届くところにもいる。
「この自転車で競輪祭にいきたいと思っていた。だから、これで優勝できて、いい流れだと思う」
フレームへの迷いもなくなり、今年最後のG1にこれ以上ない弾みをつけた柴崎にタイトル奪取の期待が膨らむ。
「あの展開だったら村上さんは粘ると思った。それは想定内だったけど、差せないのは想定外」と、2着を悔やむのは諸橋愛。思惑通りの流れに地元コンビを追走して、一瞬の隙をついて浅井の内に入った。
「(入っていくタイミングは)絶妙だった。あれで差せなかったのは俺の実力。ちょっと浅井の方を意識しすぎた感じもある。優勝して賞金を上積みして競輪祭にいきかったか」
諸橋と絡んで3着の浅井康太は、柴崎の優勝をたたえる。
「村上さんは先行っていうより、粘るんじゃないかと思っていた。あとはアッちゃん(柴崎)のタイミングでと。(後ろに)諸橋さんがいるのはわかっていたんで、どうやってしのごうかと。(柴崎と)お互いの持ち味は出せたと思うし、自分も(競輪祭に向けて)調子は上がっている」
嵯峨後位を死守した小松崎大地は、柴崎のまくりには対処できず6着。しかしながら、村上に番手を明け渡すことなく今後につながる内容だった。
「気持ち一本でした。でも、それ(番手を守り切って)で終わってるんで悔しい。(柴崎のまくりを)俺がなんとかしなきゃいけないのにいっぱいでした」