およそ23年ぶりに地元、別府記念を奪還。ゴールを駆け抜けた阿部将大の右手が自然と上がった。
　「（地元選手の優勝は01年以来で）それ以来、誰も獲ってなくて、難しい大会だった。そのなかで若い僕が獲れたのは励みになる」
　初日特選は圧巻のまくりを披露。古性優作、松浦悠士、山口拳矢のＳ級Ｓ班３人をごっそりとのみ込んで、上がり10秒9の好タイムでシリーズに弾みをつけた。二次予選からは地元での計らいもあり番手回り。余裕たっぷりの立ち回りで二次予選をクリアすると、準決は伊藤颯馬を残して３連勝で決勝につなげた。初日特選をともにした小岩大介らは、残念ながら準決で脱落。地元からはただ一人の優出となり、伊藤と２人のタッグかに思われたが松谷秀幸が３番手を固めたことも大きかった。
　「ラインあっての勝ちだし、行ってくれた（伊藤）颯馬もそうだし、松谷さんが固めてくれて心強かった」
　持ち前のスタートの早さで前団を確保。４番手には単騎の武藤龍生が続き、５番手は松浦悠士が中釜章成にフタをして赤板を迎えた。
　「中団が中釜君だったので、ワンチャン、松浦さんがフタをしてくれればって思ったらそうなった」
　古性優作を連れた中釜との壮絶な叩き合いも予想されたが、５番手に閉じ込められた中釜は２コーナーでようやく下げて、伊藤が迷いなく先行策。中釜に合わせて、打鐘３コーナーから伊藤がスパート。流れは阿部に向いた。
　「（別線）が来てなかったけど、出させてもらった。誰も来てないのに（番手から出るのは）早すぎるかなって、颯馬に申し訳なかった。今度は逆に颯馬に恩返しができるように」
　４番手を確保した松浦が最終バック手前から襲い掛かると、阿部が番手まくり。別線に影をも踏ませない完勝で、ゴールを駆け抜けた。
　「（地元記念優勝は）うれしいですね。ほかの記念と違って、（地元は）特別なものですから。地元のみなさんの前で優勝できたんで良かった」
　４月の高知、６月の函館に次いで、今年３度目のＧ３を地元で獲った。
　「（これからの九州勢を）僕が引っ張っていくっていうより、若手全員で引っ張っていこうって。僕、颯馬、嘉永（泰斗）に（伊藤）旭、（松本）秀之介とかが続いてくれればって思います」
　19年の高松宮記念杯での中川誠一郎から遠ざかっている九州地区からのタイトルホルダーの誕生。若手の底上げが目覚ましい九州新時代の幕開けに、阿部の存在は欠かせない。

　松浦のまくりを好ブロックで阻んだ松谷秀幸が流れ込んでラインでのワンツーは、車単１番人気での決着。
　「キツいですね、ジャンで松浦がなんでいるんだろうって思っていた。（最終）３コーナーで仕掛けてきて、かぶったらと思って張って脚を使った。（松浦に）行かれそうで、降りられたらコースがなくなりますから。それにしても阿部君は落ち着いていますね。（車間を）空けていましたし。（九州に付ける）選択は間違っていなかった」

　巻き返した中釜が外に浮いて、古性優作は最終ホーム手前で松浦の後ろにスイッチ。松浦のまくりが不発になり、追い込んだ古性だったが３着まで。
　「ガマ（中釜）は組み立てに失敗してしまった感じでしたね。無理やり行きましたけど、伊藤颯馬君はＧ１で戦う選手ですし、ガマはチャレンジャーなんで。僕らが内で受けて、逆の展開にしたかったですね。松浦君の動きをアテにしてしまったと思う。（浅井が）迎え入れてくれて松浦君より先に行きたかった。けど、口も空いていたし、感触がだいぶ悪かった」