ダービーでの劇的なワンツー、そしてグランプリでの兄弟タッグ。後に数々の感動のドラマが生まれ、“村上義弘”の弟という宿命を背負い、そのプレッシャーのなかで葛藤してきた博幸(京都・86期)がデビューしたのが翌年の01年8月のこと。同じ道を歩み始める弟にも、00年のふるさとダービー豊橋でのビッグ初制覇のお兄ちゃんは、ピッカピカに輝いていたことだろう。
74年生まれの同級生、中井護(滋賀・74期)との近畿連係。25歳の2人がふるダビ決勝の9人のなかでは最年少だった。老練とは言えないまでも、30代の神山雄一郎(栃木・61期)、山田裕仁(岐阜・61期、引退)らを向こうにまわして力勝負の腹を固めていた村上だったが、力だけでねじ伏せられる相手ではないことはわかっていた。もっともギアをかけていた渡会宏和(愛知・65期、引退)でさえ3.71。村上をはじめメンバー中、5人が使っていた3.57のギアが主流だった時代。上がり12.7で逃げ切るには、当然ながらテクニックも必要だった。最終ホーム手前から村上が、大カマシを敢行した。地元で完全Vをもくろむ渡会を半車身振り切っての優勝。人気の神山を6番手に置いての奇襲がハマった。
95年にビッグ初出場を果たした村上だったが、翌96年にはS級陥落の憂き目をみている。そして大舞台の壁にも幾度となく跳ね返されて、このふるダビが初めてのビッグ決勝。このまま一気にスターダムにのし上がるかに思われたが、次のビッグ優出までには、およそ2年を要することになる。