岸和田で3回目の栄光
今年3度目となったG1シリーズ「高松宮記念杯競輪」。頂上決戦の名に相応しいメンバーが顔を揃えたが、主役はやはりGP覇者の武田豊樹だった。初めてG1を制した09年のダービー、年末のGP、そして今回の大一番と3度目の栄光をこの岸和田の地で手にし、昨年のオールスター以来、6度目のタイトルを手にした。
「勝ててホッとしています。でも、自分の力だけじゃないってことは一つ言えますね。前の平原君、後ろの佐藤君と良いラインが組めたと思います。ギア規制が始まってからつかんでなくて、自転車とかトレーニングも変えたし、体調も良くなくて夏までは厳しいかなって思っていました。グランプリを勝ってから苦しかったし、プレッシャーもあったんで、嬉しいですね」
今年は全日本選抜競輪、ダービーと後一歩のところで優勝を手中に収められずにいた。そして迎えた今開催。初日から盟友平原と息のあった連係を見せて勝ち上がると、準決では今シリーズ初の自力戦。結果は3着となったが、苦しい展開からリカバリーでの勝ち上がりに自信を付け、決勝戦でも冷静な判断力と強さを見せて王者の威厳を示した。
「準決のレースがあったんで、どこからでも行けるって自信はありました。平原君が前を踏んでくれたし、ヨコにも動いてたんで、自分もギリギリまで判断しようと信頼してたんですけど、ちょっともうダメかなって見極めて外を踏みました。上をいけるかなって思ったんですけど、3コーナーの山にあたるなって感じがしたんで、ちょっとバックは踏んだんですけど、うまく番手に入れましたね。この地区のラインは日本一ですから、何とかそこを崩したいって気持ちで。敵地で結果を残せて嬉しいです」
これで2年連続でのグランプリ出場が確定。勝利の余韻を噛み締めるとともに、視点はすでに先を見据えている。
「もう(レースは)終わったんで、忘れてまたやっていきたいです。良い練習をやらないと勝てませんので、練習を考えて次のG1を目指したいですね。また、少しでも先頭走るときは、先頭走る役割をしていきたいですし、まだまだやることはたくさんあります。残り先がありますから、なんとか、もうひと踏ん張りです」稲垣裕はまたも届かず
稲垣はタイトルまであと一歩と迫ったが、武田に屈して8度目のG1決勝は準Vに終わった。
「本当に期待に応えられず、申し訳ないです。脇本も頑張ってくれたし、村上さんも(前を)任せてくれた。本当に結果を残したかったんですけど…。やっぱり何かが足りないっていうことですし、そこを今後見つけていきたい」
岩津にすくわれて一度は武田との連結を外した佐藤だったが、再度付け直して3着。
「(岩津と絡んだ)あれがなければ、2着までいけたと思う。油断以外の何物でもないし、内を締めていればなんてことはなかった。それでも武田さんとは脚力に開きがあるのを感じましたね」
結果的に近畿を分断する形になった平原は、帰り支度を始めながらこう振り返る。
「正直、(仕掛ける)タイミングはなかったです。けど、僕が動かなかったら、誰も動かないだろうし。G1にふさわしくないレースになってしまう。それで勝負しに行ったけど、稲垣さんとタイミングが合ってしまった。それで村上さんのところになってしまいました。村上さんは強いので一発で仕留められなかった。やっぱり村上さんなんで」
村上は「平原の判断も、すかさず動いた武田さんもすべてが僕より上回っていた。対処できなかった僕に責任がある」と悔しさを噛み締めた。