うまい運びで2度目の制覇
「(初手)中団がラッキーだった」と山岸佳太は振り返る。後ろ攻めの岡本総がまず動くと、打鐘で前に出た松本貴治の番手でイン粘り。隊列が短くなったところをすかさず宮本隼輔がカマすと小岩が離れ、後ろには松本が。宮本のカマシに乗っていた山岸は岡本をキメた阿竹智史の口が空いたところを逃さず3番手に入ると、直線で外を突き抜けた。
「松本君は強いし、宮本君もバック目がけてカマすだろうと。僕もそこに参戦しても良かったけど、タツオ(武藤龍生)が『狙いに行ってください。2人でゴール勝負しましょう』と言ってくれたので。宮本君の踏み直しも良かったし、松本君も伸びてた。でも昨日(準決勝)のコースで、あそこ(イエローライン付近)が伸びるコースだとわかったので。(武藤と)2人で競輪祭。それが一番ですね」
徹底先行で売ってきたが、「先行だけなら106点までかな。若手も出てるし、悔しいけど受け止めながら」と今は色々な組み立てを試している最中だ。
「(5月)岸和田では中団取りを試したり、函館では先行でどこまで持つかやってみた。今回も色んなことを試して、次に生かせるようにと思って走ってた。ひとつ結果が出たのは良かったです」
目指すのは「ハナを切って何でもできる」選手。若手機動型がそろったシリーズで山岸の今後が垣間見えた。
宮本の番手に入ったときはG3初優勝かと思われた松本貴治だったが、山岸の強襲に屈した。
「優勝もできず、宮本との勝負にも負けて悔しい。(岡本のイン粘り)あそこまであからさまに来るとは思ってなかった。ああいう(番手にはまる)形は今まで何度かあるけど、ああなると自分は車が出ない。そこは練習して力を付けるしかないですね。(宮本と)次やるときはやり返せるようにしたい。戦わないとわからないこともあるし、勉強になりました」
山岸とのワンツーはならなかった武藤龍生だが、粘る宮本をタイヤ差とらえて3着に。開口一番、「やりました!」と競輪祭の出場権獲得に笑顔を見せた。
「ゴチャゴチャしてたんでわからなかったけど、自分は山岸さんを信頼して付いていきました。(初手で)中団を取れたのがデカかったし、脚を使わずにいいとこ回れたんで。自分というより山岸さんの優勝がうれしい。これで祭り(競輪祭)ですね。決勝に乗ったら3(着)までに入りたかったので、入れてうれしい」
打鐘からすかさず踏み上げて主導権を握った宮本隼輔だったが、惜しくも4着で確定板を逃した。
「後ろでガシャンって聞こえてラッキーがあるかなと思ったんですけどね。しっかり自分のレースができたんで良かったです。最後も必死に頑張りました」
岡本との争いには勝った阿竹智史だが、山岸に前に入られ6着に敗れた。
「粘りはあるなって周回中の並びで思った。押さえるタイミングをずらすとか、もっと走り方はありましたね。(岡本をキメるのに)内に下りたときに、そのままの勢いで山岸に下りられた。今回は運がなかったということで…」
岡本総は「(イン粘りは)狙ってなかったけど、初手が後ろになって、しまった!って感じでした。押さえに行ったら宮本に踏まされてキツかったし、3車出させたらないなと思った」とイン粘りに至った経緯を説明した。