無心で踏んでグランプリスラムを達成!!
佐藤水菜
グランプリを含めての、全5冠制覇。佐藤水菜は、ガールズケイリン史上初のグランプリスラムを、大粒の涙を流して喜んだ。
各々の思惑が入り乱れて、スタートから隊列が整うまでには時間を要した。1番車の佐藤は、その中でも冷静に状況を判断。落ち着いてレースプランを遂行した。
「多分、太田(美穂)選手がSだろうと思っていて、その後ろに自在っていうコメントの選手がいる。じゃあ、その後ろがいいなって思っていたので、並びは結構自分の思うとおりに走れた。自分のタイミングが来るまで脚を溜めて、自分のタイミングの時に全力を出し切れたかなと思います」
仲澤春香が1コーナーで前に出て、流した隙をカマしたのは、児玉碧衣だった。並の選手なら追走すら苦しいスピード域。それを、佐藤の異次元の加速力が上回った。1センターから持ち出して、2コーナー過ぎから本格的に加速。佐藤の後ろにいた小林莉子ですら、一瞬で離れてしまう。3コーナーで児玉をまくり切って、その後もどんどんと後ろを引き離していく。終わってみれば、2着に5車身差を付けての圧勝劇。極限の集中力が、輪史に残る一走を生んだ。
「人の後ろしか見られていなかったので、今が何コーナーなのか、残りあと何周なのかとか、距離感覚が全くない状態でガムシャラにモガいてしまった。500バンクに慣れていない部分がありつつ、どこがゴールなんだろうという不安がありつつ、しっかり前に踏み込むということだけを徹底して、ゴール線が見えて自分が一番で入れたのですごくうれしかったです。動きが激しかったので、レースがどこでっていうより人の動きしか見れてなかったので、結構ギリギリの戦いだったかなと思います」
通算5度のG1タイトルに加えて、23年のグランプリ制覇。前人未到の領域に脚を踏み入れたその重圧は、計り知れない。支えてくれる仲間、そしてファンに、感謝の思いを口にした。
「昨日(2日目)頑張り過ぎちゃって、脚を痛めてローラーモガキも昨日乗っている方が良かったので、不安を抱えて弱気のまま入ってしまった。皆が背中を押してくれたのでやるしかないという気持ちで無理矢理、前を向いて頑張んなきゃという気持ち一つだけで乗り切りました。大勢の方が表彰式に残ってもらって、胴上げもしてもらえてすごいうれしかったです」
今年のG1は残すところあと一つ。競輪祭女子王座戦には、年間グランドスラムの偉業がかかっている。ただ、次を考えるには、今はまだ心の余白が残っていない。絶対女王に必要なのは、まず休息だろう。
「(今後は)ちょっと気持ちを立て直すまでに時間があるので、しっかりと考えて頑張ります。今が最後で、今がベストでっていうぐらいギリギリでやっているので。前を向くのは時間がかかるけど、全日本(選手権トラック)は全力で倒しにいきます」
新たな歴史に脚を踏み入れた佐藤が、この先のガールズケイリン界も、引っ張っていく。
久米詩は、周回中に2番手から1コーナーで児玉にスイッチ。佐藤に上を行かれたが、児玉を追い込んで2着に入った。
「自分の想定内の位置から始められた。(児玉)碧衣さんの後ろに切り替えられたのも良かったし、あとは脚力だけだなと。思ったより余裕はあったし、ニュートラルにも入れられたけど、ギアが上がった所で余裕がなかった。サトミナ(佐藤水菜)さんも見えていたけど、気持ちの弱さが出てしまった」
周回中に3番手の柳原真緒が、久米に続いて3着。
「自力のある人にしっかり脚を使わせようと思ってました。自分で外を踏んでいければ良かったけど、児玉さんが駆けて、佐藤さんが上を行っていたので、もう、ちょっときつかった。3コーナーでは後ろに下がらないように必死に踏んでいました。疲れはあったんですけど、その中では思ったよりも踏めた。ギアをもう2、3段階上げていかないとだめですね」