思い入れ深いドル箱走路で結果を出す
岩本俊介
SS班としての初優勝が、地元記念。松戸で味わう5度目のG3制覇を、岩本俊介は両手を挙げて喜んだ。
スタートを取ったのは、1番車の深谷知広。もう、その時点で深谷の腹は決まっていた。青板から早めに動いた北津留翼を、深谷は絶対に出させまいと、体をぶつけながら外に持ち出す。深谷は残り2周半のタイミングで一気に踏んで主導権を渡さず、そのまま隊列を一本棒にして、メイチで駆けた。
「深谷がとんでもない気合で、すごいペースだった。あれは別線は誰も仕掛けられないですよね。スタートの早い雨谷(一樹)君がいたんで、中団からっていうのも考えたんですけど、前が取れて、それが全てでした。(深谷は)徐々にペースを上げていった感じですけど、その徐々にがとてつもないスピードなんで。気持ちと、気合がすごく伝わってくるレースでした」
岩本が言うように、深谷の掛かりは半端じゃなかった。最終ホームまで別線は動けず、岩本に必勝態勢が整った。1コーナーから鈴木竜士が仕掛け、合わせるように北津留も2コーナーで持ち出したが、どちらも本来のスピード感はない。3コーナーで一振りした岩本は、深谷の余力を見極めて、返す刀で番手まくり。後ろに4車身差を付けて、思いを無駄にすることなく勝ち切った。
「一回振ったんですけど、深谷の気持ちを受け取って踏ませてもらいました。もう、深谷の掛かりがすごかったんで、深谷を交わしたところでは、誰も来れないだろうなって思いました」
昨年3月伊東以来、通算6度目のG3制覇。なんと、その内5回がホームバンクの松戸で手にしたものだ。地元での大声援は、何度味わってもいいものだ。
「松戸のファンのみなさんの声援がすごくて、他の地区の選手も、こんなに人が来るんだってびっくりしていた。松戸の競輪ファンのみなさんに感謝したいです。3番手を固めてくれた(三谷)政史さんにも感謝です。自力で獲った記念もあるんですけど、前の自力選手が気持ちを入れたレースをしてくれたおかげで、(松戸競輪場で開催された記念で)5回も優勝できた。感謝したいです」
SS班になっても、謙虚な姿勢は変わらない。「(次に向けて)やることは一緒。また練習の日々に帰って、レースに備えます」。ラインの仲間と、ファンへの感謝を繰り返し述べた優勝インタビューを、最後はとびきりの笑顔で締めくくった。
北津留が外に浮いて後退し、勢いをもらった小川勇介はそのまま前に踏み込む。岩本に離れ気味の三谷政史を外からのみこんで2着に入った。
「(レースが)ハイペース過ぎたんですけど、そのなかで北津留君が仕掛けてくれてチャンスを作ってくれました。自分のなかで価値のある開催になりました。小倉3人で連係できたので。この3人で走ることが刺激になりますし、すごいあの2人にくらいついて行けるように」
小川を追う形で園田匠が3着。準決とは小川と前後を入れ替えて挑んだ決勝戦だった。
「昨日(3日目)がきつすぎたので、今日は3番手で余裕もありました。ホームで北津留君が仕掛けて、岩本君が番手から出れば自分たちにもチャンスはあったと思うんですけど。悔しいですけど、なにより(小倉所属の)3人で決勝を走れたので」