地元ホームで悲願を達成
柳詰正宏
柳詰正宏にとっては走り慣れたホームバンク。林大悟と櫻井正孝の競りを地元3番手で眺めながら、じっと脚を溜めてチャンスを伺った。
「(優勝は)想像できなかったし、フワフワしている感じで夢を見ているみたいです。感無量ですね。慶次郎はあれ一本でしたし、自分も仕事をすることに集中できていた。競輪人生の全部の運を使ってもいいという想いで、この一戦に全部をかけました」
赤板で後ろ攻めの阪本和也が上昇すると、正攻法で構えた林慶次郎が突っ張って主導権を譲らない。阪本は中団へと車を下げて、原田研太朗は後方になり、打鐘を通過する。林慶が打鐘の3コーナーからグンっとペースを上げると、外で競っていた櫻井正孝は遅れて林大悟が番手をしっかり守る。林大が車間を切って態勢を整えていたが、最終2コーナーからまくり上げる原田がスピード良く前団に迫ってくると、それを察知した林大はタテに踏み込む。柳詰は林大の外を踏み込むと、直線で鋭く突き抜けた。
「正直、踏んだ時にあまり車が出なかったんですけど、自分の脚を信じて良かったです。(開催前は)自分が地元の牙城を守るとは思わなかったですけど、林兄弟が乗ってきてくれて、地元勢がもぎとれて、しかも自分が優勝できて信じられないですね」
2月のF1ではここホームバンク小倉でS級初優勝(単発レースを除く)を挙げ、イメージ良く臨んだ今開催。4日間でオール連対を果たし、決勝では最高の結果が待っていた。
「前半戦はここで優勝できて、後半戦の前に体調を崩してどうなるかなと思いましたけど、こうやって自分がやってきたことが実を結んで幸せです」
これで、4年ぶりに競輪祭の権利も獲得。今後は更なる飛躍を誓いたいところだろう。
「G3を優勝して、少しは注目されると思うし、これからも一戦一戦気を引き締めて頑張りたいですね」
後方8番手に置かれた原田研太朗は最終2コーナーから仕掛けると、勢い良く前団に迫る。柳詰のけん制を受けながらも外を踏み込んで2着に食い込んだ。
「想定していた展開だった。4コーナーで仕掛けていこうと思ったら、阪本君も前に踏んでいったのでバックを入れてしまった。林大悟君も脚を削られていたと思うし、溜めていた2人が1着と2着だったんだと思う。最後まで踏めている感じはあったし、4コーナーからは何とか届いた。嶋津(拓弥)さんが付いてくれたのもあるし、そのおかげです。今後はFI戦が続くけど、取りこぼししないように。競輪祭の権利も取れたので良かったです」
地元3車の後ろを固めた上野優太は4コーナーから内に進路を取って3着。ゴール後に落車したが、晴れやかな表情でインタビューに応じた。
「緊張感のあるレースでした。絶対離れられないなって思っていた。連日状態は良くなかったのでどうかなって思っていたけど、ハンドルを上げて良い感じになりました。柳詰さんは外を踏むだろうし、内しかないなって思っていた。あとは大悟と飛んでくる人との勝負かなと。(競輪祭の権利が取れたが)もう緊張しますね。G1自体初めてなので、小倉競輪祭と来年の熊本の全日本選抜に向けて頑張っていきたい。4日間通しては自力選手に恵まれました」