ピックアップ GⅢ 宇都宮 05/19
吉田拓矢が初のライン3番手回りから突き抜けて優勝。吉田は準決勝後の並びを決める話し合いの段階から、優勝後のインタビューでも「栃茨ラインを大事にしたい」と何度も繰り返して、ラインの絆の重要性を説いた。今の平原康多のように、吉田が関東を束ねる存在になる日も、そう遠くないと予感した。
何かがおかしい。近況の取鳥雄吾を見ると、そう感じざるをえなかった。ウィナーズカップから歯車が狂いだし、3月地元記念を途中欠場。「何かを変えないと」。練習方法や、ケアの仕方を見直して臨んだ今節も、本来の姿からは遠かった。それが、最終日は力強い逃げ切りと一変。復調への大きなきっかけをつかんだか。
「2日目が終わった後に、小倉(竜二)さんがペダルをプレゼントしてくれた。それまで使っていたやつも3年前に小倉さんに頂いたもので、そんな古いやつを使うなと言って今回もプレゼントしてもらいました。それで新しくしたら、今まで悩んでいた自転車との一体感が出て、いい感じに走れるようになった。踏んだときに引っ掛かりができてスピード感も戻ってきた感じなんですよね。準決が終わってから、松浦さんがあれを乗り越えられるようになったら、俺たちの幅が広がるなって言ってくれて、結果乗り越えられなかったけど、兆しが見えた感じがした」
高橋晋也は勝ち上がりこそ二次予選までだったが、持ち味のスピード感溢れる競走を連日披露。決勝に進出したメンバーと、なんら遜色ない仕上がりの良さを見せていた。持っているポテンシャルの高さは誰もが認めるところ。そこに気持ちの強さと、レースへの対応力が備われば、もうワンランク戦いの場を上げることができるだろう。
「今回は優勝できるんじゃないかってくらい仕上がっていた。でも、競輪は甘くない。連日、流れに乗っていなくて、自分でスピードを立ち上げていく感じだった。もっと巧く競輪がしたいです。ウィナーズカップが終わってから、一旦福島に戻って、1、2カ月くらい師匠(飯野祐太)と一緒に、合宿みたいな感じでずっと練習していました。そこで脚が付いたとかそういうことよりも、気持ちの面が大きいですね。師匠との練習でそれが身に付いたと思う。自分で言うのもなんだけど、練習じゃ強いのにそれを競走で出せていなかった。今の拠点は伊東ですけど、師匠とは機会があればちょくちょく練習したい。飯野さんが師匠でよかったって思ってます」
森田優弥はダービーで思うような結果を残せず、二次予選敗退の今節も、どこかうつむき加減。同級生の眞杉匠がこの二開催で一気にブレイクを果たしただけに、胸に期するものがあるだろう。最終日は、うっ憤を晴らすように豪快にまくってみせた。何も得ず、悔しさだけを持ち帰ったわけではない。
「昨日(3日目)、終わってから宿口(陽一)さんと、吉田(拓矢)さんにセッティングを見てもらってよくなりました。あまりガラッとは変えてないんですけど、気になった部分を聞いたらアドバイスをしてくれて、よくなりました。ダービーでも乗り方がよくなかったり、成績もよくなくて気分的にも落ち込んでいた。だけど、この1着でいい開催になりました」
初めての地元記念決勝へと挑んだ金子幸央。アマチュア時代からよく知る眞杉匠との初連係が、大一番で実現した。だが、歓喜の瞬間は、するりと手から零れ落ちた。悔しさに肩を落としながらも、弟分との初めてのレースを振り返った。
「とにかく眞杉が僕を競らせないようにって一念で頑張ってくれたのに、情けない。眞杉の掛かりがよくて(中川)誠一郎さんは止まったと思ったけど、ヨコの誠一郎さんが気になって振ったら、内には吉田君がいて…。自分の脚のなさと、技術のなさが全部出た。アマチュア時代から何年も一緒に練習してる眞杉と、地元記念の決勝を走ってるんだと思うと、周回中から感慨深かった。楽しいレースでした。レース後も、眞杉と楽しかったねって話してたんですよ。またいつか眞杉と連係できるように。その時までには、ワンツーを決められるように、脚も、技術も、磨いていきたい」