復活への大きな一歩
昨年8月豊橋記念以来のV。一年以上遠ざかっていた優勝の味を思い出すように、深谷が言葉を選ぶ。
「今年(優勝が)ないまま終わりそうだったんで…」
まくり追い込みが届いた準決だったが、立ち遅れたことが響いて浅井康とそろっての優出には失敗。悔いを残した。
「準決で後ろに迷惑を掛けてしまった。あのレースで決勝に乗ったんで最低優勝はしないとって思ってた」
地元の竹内雄までもが、まさかの準決敗退。地元地区ながらもひとりで決勝に臨んだ深谷は、大きな期待と責任を一身に背負った。
周回中は想定外の9番手。しかしながら、レースが早めに動き出し、めまぐるしくラインが入れ替わると、深谷は打鐘で単独の3番手を確保。願ってもないポジションを手に入れた。
「落ち着いていい位置が取れた。あとは平原さんにだけかぶらないようにと思っていました」
最終1センターでエンジンを点火。自らを信じて踏み上げると、あっさりと前団を飲み込んだが、後ろには平原が迫って来ていた。
「あそこからならもつ自信があった。途中から平原さんが後ろにいましたよね。すごい威圧感だった」
苦しい直線で最後の力を振り絞り、1年2カ月ぶりにファイナルのゴールを先頭で駆け抜けた。
「競輪祭を優勝っていう目標で練習をしてきたんで、一歩近づいたと思います。これで次の豊橋に弾みがつきましたね」
中部の仲間たち、そして名勝負を演じてきたライバル。なによりも多くのファンが待ち望んだ復活。深谷は15年のラストG1競輪祭へ加速し続ける。
2着の平原は悔しさをにじませながらも、ライバルの復活には目を細める。
「深谷はゴールまで加速していた感じです。抜きにいったけど、一歩目で厳しいかなと。深谷が強いと盛り上がるし、まだまだ自分も努力しないといけない」
中割り断行も、小林は及ばすの3着。
「深谷の後輪に接触して最後はスポークが折れちゃいました。あそこは外より内かなって思った」
「みんな強いんで自分が行くしかないと思ったけど、やっぱり脚が違いますね」と、逃げた櫻井が記念初決勝で力の差を痛感する。