稲川翔が復活のⅤ
「ここまで正直、苦しかった」。相次ぐ落車で、初のS班は一年で陥落。不安と焦りが自身を襲ったが、稲川は常に前だけを見続けた。そして、逆境を乗り越え初の記念Vをつかんだ。
「ワッキー(脇本)を抜いた感触はなかったですね。でも、ゴール後に藤木に『獲ったか』と言われてジーンときました。(記念優勝は)ひとつの目標にしていましたし、腐らずにきたことが良かったですね。でも、怪我もあって、まさかこんなに早く獲れるとは思わなかったです」
昨年、12月の伊東記念で左肘を骨折し今年は全日本を欠場。心が折れそうになる中、支えてくれたのは近畿の仲間たちだった。
「一番苦しかったのは、今年の全日本を病院で見ている時ですね。自分は本当に走れるのか。今の現状と違いすぎて。でも、(村上)博幸さんとか、南(修二)さんとか村上(義弘)さんとかが親身になって気にかけてくれたし、村上さんが(3月ダービーで)優勝してくれて、感化されました。ワッキーも頑張ってくれたし、ちょっとずつ何かの形で恩を返していきたいです」
F1戦をはさみ次はいよいよ静岡ダービー。自信を取り戻した稲川が、再度大舞台で輝きを放つ。
「レースの中で恐怖心はないですし、走る以上は自分のやることをやろうと思っています。大きいところで、また優勝争いができるように頑張ります」
準決と同様に力強い先行を見せた脇本だったが、惜しくも準V。
「風はそんなになかったんですけどね。ただ、稲川さんが仕上がっていました」
近畿3番手を固めた藤木が3着。しっかり内を締めて、稲川の優勝に貢献した。
「自分も優勝は狙っていました。次に自分が番手を回った時は獲れるように」
新田は5番手からまくるも、伸びを欠いた。
「本当は郡司君の位置が欲しかったです。郡司君が(2センターで)止まっていて、あの外はダメだとわかっていたけど、いくしかなくて。あれが精一杯です」
4番手からまくった郡司だったが、地元Vは叶わず。
「位置を取ったけど、それで終了です。改めて力勝負をして、敵わない相手でした。こういう(脇本のすんなり駆けの)ときの戦い方を覚えていかないといけないし、それ以上の力を付けないといけないですね」
GP覇者の浅井は後方に置かれ、まさかの8着敗戦。
「新田君がいくと思って。ワンテンポ遅れてしまいました」
2度目の記念決勝に挑んだ松浦だったが、郡司と呼吸が合わなかった。
「(最終ホームで)新田さんなら入れてもいいと思って、引けと言ったら新田さんが引いてきてしまいました。その後は浅井さんだけは絶対にいかせないと思いました。申し訳ないです。次はミスをしないように」