記録塗り替え最速V
「作戦はあんまり浮かばなかったし、どこを取ってもと思って前受けになった」
昨年のデビューから1年余りの新山は、歴戦の顔ぶれにも臆せず前受けを選択。シンプルに自らのポテンシャルを信じた“超特急”は、ゴールまで止まることはなかった。4日制の記念ではデビュー最速となる1年20日での優勝を飾った。
「今日は全身を使って踏めたのが良かったです。まさか勝てるとは思ってなくて、(菊地)圭尚さんに勝ってもらえればくらいの気持ちでいたんですけど」
早めに上昇を始めた木暮を突っ張ると、あとは別線をクギづけ。G1決勝でもしのぎを削っている同型に反撃の隙を与えず、最終ホーム目がけてフルアクセルで踏み込んだ。
「早めに押さえに来ると思ったんで、それなら1回出させてからと。そしたら(木暮が)引いてくれた」
中団以降は新山のダッシュに置かれて圏外。最終バックでは新山を含め、地元の菊地、木暮、山下の4人に優勝争いは絞られたが、結果は新山の独壇場。番手すんなりの菊地、脚を溜めた木暮に影を踏ませず逃走劇を完結させた。
「(デビューから)1年たっちゃいましたからね。でも意外に早く優勝できた。これで終わらないように。まだ、なんにも成し遂げてないんで、しっかりとタイトルを獲って頑張りたい」
9月の共同通信社杯、そして10月には初めてのG1、寬仁親王牌と秋には大きな舞台が新山を待っている。
「(G1は)走ってないし、いまでも憧れの舞台です。それまでしっかり練習を怠らないように。まだ、これがスタートにすぎない。みんなで切磋琢磨して、北でG1を獲れるように」
記念Vはあくまでスタート地点。北の夢を乗せた“シンザン・エクスプレス”が、これからも輪界の歴史を塗り替えていく。
新山とシリーズ3度目の連係となった菊地は、またしても2着。地元記念は3年連続で準Vに終わった。
「もちろんG1はあるけど、去年からここで優勝するつもりでやってきた。2年間悔しい思いもしているし、そのぶんもと思ってたんですけど…。このままのやり方ではダメ。考え直します。せっかく強い選手が出てきたのに、チャンスをモノにできないと。トラウマにだけはならないように。来年は必ず1着で」
3番手を労せずに手に入れた木暮だったが、そのままのポジションの3着入線。
「圭尚さんが追い込んで、自分は内か外かって思っていたんですけど。(新山が)強かった、認めるしかない」
打鐘で近藤にすくわれた川村は、反撃のタイミングを逸して見せ場なく敗れた。
「近藤君が後ろのままっていうのは意外でした。近藤君をアテにしすぎました。まさか動かないとは…。自分が悪いですね、もっと先に動いていかないと」