確信のタイヤ差V
最終ホーム手前から満を持して仕掛けた吉田に、自転車を並べたところがゴール。スローVTRでも微妙な判定だったが、とらえていた武田には確信があった。
「抜いてたね。簡単じゃないけど。(吉田が)まくりに構えた時点で残してあげたかった。位置を取って(吉田が)まくってなら、ゴール勝負と思ってましたから。やっぱりトレーニングに励んでないとまくりにもちぎれるし、カバーも、車間調整もできない」
落車での幕開けとなった16年。苦しいシーズンを強いられながらも、28度目のG3制覇を遂げた。
「みんないろいろあるし、その繰り返しですね」
南、武井、競り合う両者を連れて中井が主導権。絶好位を手に入れた吉田は、前団のもつれをじっと見極め最終ホーム手前から発進。バックでは3番手以下をちぎっていたが、山本のまくりが襲い掛かる。好スピードで迫り来る山本に、武田は冷静沈着な対処。直線の入り口で外にひと振り。緻密な仕事が吉田と初めてのワンツーを結実させた。
「こういう後輩も出てきてくれて感謝です。しっかり競輪っていうものを伝えて、G1でも勝てる選手になって欲しい。ただもう次。吉田も次だと思うし、やるべきことがたくさんある」
グレードレースでは、遅まきながら今年初V。それでも輪界の歴史を作り上げてきた武田に、焦りは感じられない。
吉田は武田とのワンツーにホッと一息ついて、汗をぬぐう。
「前(中井)が確実に駆けるのがわかっていたんで、自分は緩んでいたところを行こうって思った。今日はレース前から落ち着いていました。武田さんと共倒れにならないようにと思っていた。結果、武田さんが優勝だったし、初めてのワンツーでよかったです」
茨城勢を飲み込むかにも思われた山本のまくりだったが、武田のけん制で直線では勢いが鈍り3着まで。
「自分でも行ったと思ったんですけど…。武田さんにうまいことやられました。あとは組み立てですね。最低でも中団は取らないと」
周囲中から茨城勢後位にいた渡部だったが、踏み出しで遅れて万事休す。
「吉田君が2回くらい行きかけてやめた…。あれじゃ無理ですね」