仲間に支えられて
武雄記念を制した13年には、4度のG1優出。選手層の厚い近畿勢においても存在感を放ち、タイトル奪取も時間の問題と思われていた。が、ビッグの決勝から遠ざかり、そこから5年以上の月日が流れていった。
「めっちゃ、つらかった…」
高校生の時に見た村上義の記念優勝に心を奪われて競輪選手を志した。藤木にとっての憧れのヒーローと同じ地元の舞台での記念制覇。藤木は支えてきてくれた仲間をはじめ、周りへの感謝を口にする。
「(三谷)竜生が一生懸命、頑張ってくれて、(山田)久徳が自分の仕事をしてくれた。(村上)博幸さんは(4番手を)固めてくれて、自分に場所を譲ってくれた。自分は村上博幸さんに育ててもらって、久徳に助けてもらった」
S級S班の三谷が先頭を務める強力な布陣。前を練習仲間の後輩、そしてラインのシンガリを恩人が固めて、藤木にとってはこれ以上ない地元ファイナルの舞台だった。
「(首の)ヘルニアで2年間を棒に振った。けど、それが今年に入ってマシになった。もう1回練習を(一緒に)させてくださいっていうのを博幸さんが快く引き受けてくれた。博幸さんと久徳と一緒に平安賞の決勝を走れるとは」
三谷が主導権を奪うが、いま勢いに乗る清水がまくりで襲い掛かる。山田が番手まくりを打つと、藤木は最終3角で清水を大きくブロックして追い込む。地元の記念決勝のゴールを藤木が先頭で駆け抜けた。
「みなさんのおかげで勝たせてもらったんで、次は自分で勝てるように。自分の戦法で絶対に(G1に)戻ってきます」
周囲の助けで地元記念Vにたどり着いた藤木の復活のG1獲りが、再びここから始まる。
「やっぱりアイツもいろいろあったから」と、近くで藤木の苦悩を見てきた村上は、目を赤くする。
「アイツはすごいしんどい時期があって、自分もそれを見ていた。G1目指して練習した結果の通過点ですね。今回は兄(義弘)の欠場もあって厳しかった。稲垣(裕)さんと自分がしっかり支えてかなきゃっていうのがあった」
村上が山田と藤木の間に進路を取ると、岩津は直線で外を踏んで3着に入った。
「(清水は)臨機応変に組み立ててくれたけど、相手が強かった」