村上義弘が35度目のG3制覇
「底は脱したかと」
稲垣裕之とタッグを組んだ2日目の二次予選Aで“上向く”手応えを得た村上義弘が、昨年10月の松戸以来の優勝を遂げた。
「年齢も年齢ですし、(昨年の)グランプリも悔しい結果に終わった。ハイレベルなトレーニングをして疲労が蓄積しているところに、(2月末の玉野で)落車して骨折した。怪我を治すエネルギーが体に枯渇していた。練習しても悪くなるばっかりで、体力的にこのあたりがいっぱいなのかって思ったこともあった」
怪我から復帰後の4場所で挙げた勝ち星はわずかに3つ。なかなか上がってこないコンディションに一番もどかしい思いをしたのは、誰よりも村上自身に違いない。ファンの声援が村上を支えた。
「ファンの方の声援で腐らずに競輪に向き合ってこれたことが、この結果につながった」
明確ではないながらも感触をつかんで迎えた決勝。単騎だったが、仕掛けることに迷いはなかった。
「このタイミングじゃなきゃ、浅井(康太)も菅田(壱道)も行ってしまう。そうなるとかぶってしまうんで、自分で動こうと思っていた。踏もうと思っていた瞬間に、浅井の車の音がした」
渡邉雄太の主導権。4車で結束した南関ライン分断を地元コンビが図って、隊列は凝縮される。浅井、菅田と単騎の3人の中では1番前にポジショニングしていた村上は、最終2角手前からまくった浅井にスイッチして追いかけた。
「展開に恵まれた感がある。でも、自分で(仕掛けて)行くっていう気持ちがそういう展開を呼び込んだんだと。タテで勝負しようという気持ちが、流れを呼び込んだんだと思う」
村上後位には菅田が迫り、直線の入り口では単騎の3人の勝負。浅井を交わした村上が、外から詰め寄る菅田を退けた。
「日本選手権の直後も熱が出たりしたけど、それでも練習を続けた。それが底力につながると。泥臭くても、正面からやるしかない。本当に次があるか、わからないけど、次に向けて頑張るしかない。悔いのないように」
S級S班に返り咲いて初の優勝。時代は令和に改元されても、村上のやり方が変わることはない。
周回中から村上の後ろにいた菅田壱道だったが、浮いた小埜正義が下がってきた最終2角で外を回されるロスが響いた。車間が空きながら村上を追って2着がいっぱい。
「小埜さんが外をやめてくれたら良かったけど。あれで村上さんに付いていくと失格になると思った。俺も自分で仕掛けようとした時にバックに入れた。チャンスはあったんですけど…」
9番手でじっと我慢の浅井康太は、単騎のリスクを恐れずにまくりを敢行した。
「先に仕掛けて先頭に立って勝負しようと。あそこは勝負どころと思って行った。しっかり仕掛けられたんで、行かないで2、3着よりも、行って2、3着の方が今後につながる」
主導権を握った渡邉雄太だったが、後続の競りもあって浅井のまくりを合わせ切れずに7着に沈んだ。
「出るところは、全開で行った。でも、(後ろが競りになって)考えながらでした。浅井さんが踏んだのが見えたんで、(最終)バック目がけて全開だったんですけど」