山岸佳太が豪快に押し切る
鈴木裕が赤板1センターから前に出て、打鐘前に伊藤信にすくわれた片岡迪之が前に踏んだところを山岸佳太は逃さなかった。2センターからカマすと、鈴木を叩いた片岡を2コーナーで飲み込み、6月四日市以来となる今年2度目のG3を制覇。勝負の大一番で明暗を分けたのは、精神的な余裕だ。
「競輪祭(の出場権)や優勝を狙ってるから、みんな駆けたくないだろうし、バック本数は自分が一番持ってる。僕は四日市で優勝してたし、気持ちに余裕はありました」
二次予選でも連係した五日市誠に対する信頼感も山岸の思い切った仕掛けをあと押しした。
「五日市さんは絶対付いてきてくれると思ってた。二次予選で連係して、(最終)4コーナーで仕事してくれてたのも見てた。安心してました」
優勝を狙いに行った四日市の優勝は追い込んでのもの。今回は力勝負を制しての結果に「自分のなかではスッキリした勝ち方だったと思う」と山岸は胸を張る。
「G3は獲れるねってみんなに言われるんで(苦笑)。でもG1は出たり出なかったりで、活躍出来てないのは痛感してる。そこが目標ですね。あとは練習するだけです」
これで今年はG3優勝が2回。山岸が次に見すえるのはビッグレースでの活躍だ。
片岡に叩かれた鈴木裕だったが、内を粘り強く踏んで加倉を飛ばすとバックで外を踏んで五日市の後ろに。直線では中を鋭く割って2着に突っ込んだ。
「ずっと踏みっぱなしで体力がなくなりました。片岡君を突っ張ると山岸君に簡単に出切られちゃうと思って、どうしようか迷いながら走っていた。そしたら山岸君に出られてしまったので、夢中で追って山岸君ラインに切り替えた。伊藤君がまくってきて止まったから最後は内だと。3コーナーで迷わず内を踏めば優勝でしたね。外を踏む意識があった分、遅れてしまった」
山岸マークの五日市誠にも優勝のチャンスはあった。
「余裕がなかったし、抜けない。山岸君が出切った辺りから抜ける感じはしなかった。伊藤さんにまくられるのはマズイと思ってとりあえず振ったけど、練習と経験が足りないですね。展開も良くなったし、(山岸は)仕掛けどころを逃さず行ってくれた。付いて行きやすかったです。初めてこれでG1(競輪祭)に出られるので、そこに向けて準備したい」
シリーズの気配は抜群だった伊藤信。山岸ライン目がけて1センターからまくったが、五日市のけん制を乗り越えることができなかった。
「ジャンでしゃくったら片岡が行くかなと思ったけど、山岸も来てたっすね。バック踏んでる間に行かれたからキツかった。どっちが良かったのかはわからないけど、なかなかこういう(優勝を狙える)機会はないんで」
地元でG3初優勝を狙った大塚玲は8着。「判断ミスですね。詰まっちゃったから外を踏んだほうがいいかなと思ったら合わされた。甘かったですね」と山岸ラインにスイッチを狙った1センターでの判断を悔やんだ。