脇本雄太が力の違いで4連勝
東、西日本に分かれた勝ち上がりは、同じく来年の東京五輪、自転車競技のトラック種目の五輪代表に内定している新田祐大と決勝まではぶつかることはなかった。日本代表のチームメイトとしてともに汗を流す新田と脇本雄太にとっては、この高松宮記念杯が今年の初場所。昨年の立川グランプリ以来の対戦となった注目の決勝も、自身を奮い立たせ、己との戦いに徹した。
「連日、同じレースをしてたので、(決勝も)同じレースをしようと。決勝では(その組み立てでは)通用しないかなっていう思いもあったけど、弱気な気持ちではと。これで負けたらしょうがないっていう思いでした」
ハイスピードで1周半を踏み切る脇本だけがなせる芸当。輪界の常識を超えた圧巻のパフォーマンスは、歴史のある東西バトル、高松宮記念杯で近畿の牙城を守り抜いた。
「(スパートするタイミングも)決めていました。(先頭に出てからは)僕の中ではペースでしっかり。先行で逃げ切るくらいの脚力を残したまま、ペースで踏んで行こうって思っていました。バックの向かい風がかなりキツかったんですけども、しっかり踏み直しはできたかなと思います。みんなの自転車の影が見えていたので、ゴールするまでは気が抜けない状態でした」
赤板2角から踏み込んだ脇本は、打鐘3角で先頭に立つ。ラインの稲川翔が番手に続いたが、稲垣裕之はさばかれて3番手には平原康多。最終ホーム手前から反撃に出た松浦悠士が迫ると、稲川が残りの力を振り絞ってけん制した。稲川は力尽き後退。直線で松浦、その後ろから和田健太郎が追い込んだが、脇本を脅かすことはできなかった。2着の和田とは半車身の差だが、着差以上の完勝劇だった。
「これがラインの結束力かなと。(3日目が)僕にとっては一番のポイントでした。ラインでワンツースリーを決められたこと。どうやったらラインを引き連れていくことができるかをあらためて思いました」
脚力的には抜けた存在であるのは誰もが認めるところだが、近畿の伝統である“ラインの力”を重んじるスタイルは変わらない。近畿が育んだ五輪戦士が、昨年のダービーに次ぐ完全Vで4度目のG1制覇を遂げた。
「(今後の出走の予定は)オールスターまでは走れると思うんですけど、まだどうなるのかわからないので、目の前にあるあっ旋はしっかり走ってアピールしたい。またグランプリを走れることをうれしく思います。グランプリを先行で優勝したいっていう思いがある」
新型コロナウイルス感染症の影響で東京五輪が来年に延期されたことで巡ってきた高松宮記念杯出場。画面越しではあるものの、絶対的な力をファンに見せつけた脇本のこれからに心躍らずにはいられない。
松浦マークから直線で伸びた和田健太郎が、2着に食い込んだ。
「僕は人の後ろだったので、若干余裕がありました。中を踏もうかどうしようか考えていて、とりあえず締めておけば平原君も入ってこないだろうと。何回かGIの決勝に乗っているけど、表彰台は初めて。ホッとしています。次は南関の自力選手と勝ち上がりたい」
平原の気配を察した松浦悠士が、まくりで見せ場をつくった。
「自分が(脇本ラインに)飛び付くことを考えていたけど、平原さんが飛び付く感じがしたんで急きょ自力にした。イケると思ったけど、脇本さんが余力を残していた。すごい踏み直された」
想定外の展開に陥った新田祐大は、まくり不発の8着。
「平原さんが(脇本ラインの)3番手にいたことですごいビックリして、ズルズル下がってしまった。ラインを行かせてしまったのが敗因。そのあとは自分のなかの一番いいタイミングで行ったけど、膨らんでしまった」