イン強襲でV奪取
今年最初のG1ファイナルの号砲が鳴ると、抜群のスタート力で松浦悠士が誘導後位に取りつく。グランプリ王者、今年の1番車が約束されている古性優作は、抜かりなく中四国勢の後ろの3番手を確保。その位置取りが最終的に明暗を分けた。
「レース内容が良くなかった。(優勝して)うれしい気持ちもあるけど、悔しいですね」
単騎の深谷知広、平原康多が8、9番手で周回を重ねて、赤板を迎えても誰も動かない。そのまま打鐘を通過して、腹を固めた太田竜馬がペースを上げて風を切る。単騎だった昨年グランプリでは、4番手から仕掛けた古性だったが、太田の掛かりに動けない。が、5番手の新田祐大のまくりが飛んできた。
「全然、仕掛けられるようなスピードじゃなかった。太田君の出脚がすごくて口が空いた感じがあって、脚がたまらなかった。あの掛かりで新田さんが来るとは思わなかったんでビックリした。それに(前の)松浦君は余裕がありそうだったんで、どんだけ強いねんって思いました」
最終3コーナー過ぎに新田のまくりにかぶった古性は、外のコースをふさがれて窮地に陥った。が、そこからが真骨頂。新田に合わせて松浦が番手から出ると、Vロードを探し求めた。
「あそこしかなかった。外に新田さんがいてヤバいなと思って、とっさの判断で(松浦の内に)行きました」
松浦が外の新田を張るように、一瞬だけ空けたインを突いた古性が追い込む。外の新田の強襲を退けて、松浦をとらえたところがゴールだった。
「太田君が前だったんで、新田さんが動いてレースが回るかと思ってたんで想定外の展開でした。(最終)1センターくらいで仕掛けられるのが理想でした」
31歳のバースデーとなった準決ではまくりでシリーズ初勝利を飾り、ファイナルに弾みをつけた。絶好調ではなかったが、脚力だけではなくレースでの判断力と俊敏な立ち回りを武器に、総合力で戦える強みを生かした。
「あんまり調子がいいっていう感じではなかった。気持ちでカバーできたかなと思います」
8月のオールスターで初戴冠を遂げた古性は、年末のグランプリを制して初の賞金王、最優秀選手賞にも輝いた。
「(最優秀選手賞という)すばらしい賞をいただけると思ってなかった。まだ自覚もそこまでついてなかったけど、SSですし(GPチャンピオンの)1番車も着ているのでしっかり走ろうと。一番先にグランプリを決められてホッとしています。(昨年のオールスターとGPを獲って)自分が思ってるよりオッズが変わった気がします。自分の脚力は上がってないけど、期待度は上がっていると思う。それを力に変えてしっかり自信をもってレースができてるかなと。このあとも気を抜かずに、もっといっぱい(タイトルを)獲れるように頑張りたい。これにまったく満足できていないですし、(決勝は)レース内容も良くない。良かったのは結果だけなんで、レース内容も結果も最高と言えるようなタテ脚を磨いていって、そういう選手になれたらいいかなと思います」
年末のグランプリ出場が当確。しかしながら、それに甘んじることなく、自身を高めていくことに古性は余念がない。
単騎の2人をはじめ別線は動かない。太田が前受けからそのまま先行策。最終3コーナーから番手まくりを打った松浦悠士は、外の新田には先着したが、内を古性にいかれた。
「(最終3コーナーで)外に選手も来ていましたし、太田君も目イチで駆けてくれていた。バックでタレてきていましたし、自分が出る形になってしまいました。2コーナーで詰める勢いで出ていっても、後ろにサラ脚の古性君もいましたしやられていたかなって。難しかったですね。最後に一瞬空けてしまったところを(古性に)行かれてしまいました。太田君が頑張ってくれたのに申し訳ない」
5番手の新田祐大は、打鐘でアクションを起こしかけたがじっと我慢。最終2コーナー過ぎからのまくりになった。
「深谷君の動きも気になったんですけど、太田君も強かった。(最終)2コーナー過ぎ、バックでいったんですけど、自分が思っているスピード域に達するまでに時間が掛かってしまいました。そこからの伸びと松浦君が踏み込んだ感じと、ちょっと難しかった。ジャンでも少し迷いましたし、バックで仕掛けたところも迷いがありました」