単騎まくりで地元G1制覇
ゴールした瞬間、純白に輝くグランプリユニフォームの右手が上がった。そして人差し指を岸和田の空に突き上げて、地元ファンにナンバーワンをアピールした。
「脚見せの時から(ファンの)声援もすごかった。ジーンとくるものがあって、これ優勝したらたぶん泣くやろなって思った。けど泣かなかったですね。泣くって言うよりヨッシャーって感覚が強くて、泣くのこえましたね(笑)」
昨年8月にオールスターで初戴冠。年末のグランプリを制して、今年の2月には全日本選抜を優勝。2個のG1タイトルにグランプリを携えての凱旋シリーズ。はかり知れない重圧がかかるなか、ラインの力で決勝にコマを進めた。
「このG1(高松宮記念杯)だけ唯一、決勝に乗ったことがなかったですし、いままでカラ回りをしていた。決勝が最低限の目標だと思っていたので、なんとかスタートラインに立てた」と、準決のあとに振り返った。
地元、初のG1は15年の高松宮記念杯。そから昨年まで5回の地元G1で決勝は遠かった。しかしながら、今年は違った。1つ1つの積み重ねが古性優作を大きく成長させ、グランプリを獲った時と同じ単騎の決勝にも心が揺れることはなかった。
「展開が向きましたね。(初手は)ちょっと思ってた位置取りじゃなかったんですけど、あそこ(福島勢の後ろ)から組み立てればいいかなと。流れに身を任せてって感じでしたね。(最終2コーナーからまくったが)もう行くしかないなと。無理やり行っただけ。感覚もすごい悪かったですし…」
打鐘手前から仕掛けた小松崎大地が、最終ホームで主導権を奪って駆ける。しかしながら、郡司浩平が飛び付いて後続はもつれる。単騎で後続に食われるリスクも恐れることなく、古性は最終2コーナー過ぎから踏み出した。逃げる小松崎を4コーナーでとらえて先頭に立つと、あとは気持ちだけ。すんなりと続いた山田庸平に差し込ませることなく、1車身の差を守ってゴールを駆け抜けた。
「今回に関しては初日は(野原)雅也が頑張ってくれましたし、2、3日目と岡崎(智哉)さんがすごい頑張ってくれました。本当にラインのおかげで決勝戦に乗せてもらった。自分は力を一滴も残さず、出し切るだけだなと思っていた。(グランプリチャンピオンジャージの)1番車としての責任はいまのところ果たせてるかなと。状態が良くないなかでも、なんとか踏ん張れたかなと思います」
完調でなくてもG1を勝ち切る底力。全日本選抜に続いて脇本雄太不在のシリーズで、近畿の大黒柱としての責務を全うした。
「脇本さんがいない時に、どういう結果を出せるかっていうのが求められていると思う。もちろん、脇本さんがいたら(近畿の)戦力が思い切り上がるんですけど、脇本さんがいない時にどんだけ結果を残せるか。そこで優勝ができなかったら脇本さん頼みになってしまいますし、結果が残せて本当にうれしかった」
この優勝で今年の獲得賞金も脇本に並ぶ1億円超え。近畿の2人がいまの輪界の中心にいる。
「要所、要所でいい成績が残せているので、いまのところ100点かなと思ってますね。(これからも)僕が1着を取れるようなレースをして、それを抜いたら追い込み選手が1着みたいな安定感ある走りができるのが一番理想。ただ、今年に関してやっぱり1着回数も少ないなと思いますし、まだまだ力がないなかなと」
理想の“古性優作”像にはまだ遠いが、地元ファンの声援がその高みへのぼる古性の背中を押してくれる。
いったんは押さえて出た山田庸平だったが、赤板2コーナー手前で郡司に内から盛り返されて最終ホーム過ぎに九州勢は後方。古性のまくりに流れ込んだものの、2着のレース内容を反省する。
「郡司さんが前だったので、突っ張られないようにって勢いをつけて切りに行ったんですけどね。突っ張られて、引くのも遅くなった。結果的に(古性の仕掛けを)アテにした感じですね。たまたま流れ込んだ感じ。古性君にラインがあったら自分で行かないと厳しかった。しっかりと脚力をつけていかないと」
九州ライン3番手の園田匠は、最終バックで9番手。そこからコースを探して、最後は山田と荒井崇博の間を伸びた。
「荒井さんが踏んだコースの反対を踏もうと思っていた。でも、古性君が強かったですね。九州も盛り上がってきている。あともう1個ってところですけど、(ラインの)3人で2、3、4着なんで。しっかりとこの状態を保てれば勝負できると思う」