5連勝の完全優勝
ドリームレースから、誰も寄せつけることなく無傷の4連勝で優出。完全Vのプレッシャーのなかで、脇本雄太が抱いていた不安が現実のものになった。
「僕自身は寺崎(浩平)君の後輪に集中してるなかで不意を突かれる形だった。正直、あのあたりは技量不足が露骨に出たなと思います」
単騎の松浦悠士が、インから影をひそめるように進出。赤板過ぎに脇本をすくって寺崎の番手を奪った。同県の後輩、寺崎はそのままグングンとスピードを上げて主導権。究極の選択を迫られた脇本は、気持ちを“勝利”の一点にスイッチした。
「(松浦に)内に入られたあとの守澤(太志)さんの当たりだったりとかも、自分が下げざるを得ない要因の1つだったのかなと。そこからまたしっかり優勝するために、気持ちを切り替えたって感じですね」
4車の北日本勢に中団を明け渡し、脇本は7番手で打鐘を通過。並みの選手なら万事休すの展開だろうが、いままでも常識を覆す走りでファンの期待に応えてきた。信じるファンのために、脇本が進撃を始めた。
「(打鐘の)4コーナーを回って、直線のところでは仕掛けることができたのかなと。それでも仕掛けは半信半疑だったので、本当にギリギリ届いたなという感じです。自分が1着で駆け抜けたのかって本当に疑問に思うぐらいのゴールだった。そのあとに自分が1着って確信を得るまで、半周以上かかったのかなと思います」
盤石の態勢から松浦が番手まくりを放つ。脇本は最終バック手前からその上をまくるがまだ前は遠い。松浦が北日本勢を退けて押し切るかに見えたが、ゴール寸前で外を脇本が突き抜けた。
「(オールスターは)相性のいい大会だと思いますし、去年も2着だったんですけど勝ち上がりでもしっかり自分の力を出し切れた決勝だった。ナイターとはいえ本当に相性のいい大会だと。(5日目が中止順延になって)準決も含めてしっかり気持ちの切り替えもできたなかでの今回だったなと思います」
初タイトルとなった18年以来、2度目のオールスターV。昨年の疲労骨折による長期の戦線離脱の影響もあり、脇本にとっては今シリーズが今年2度目のG1出場。その2回、ダービー、オールスターをともに制して、獲得賞金ランクもトップ。すでに年末のグランプリのキップを手中に収めている。
「(今後は)大きな目標としては、G1に向けてまたしっかり調整し直すってところからだと思います。今回の決勝は番手戦だったんですけど、いい経験にもなりましたし、自分の技量不足が露骨に出た形とはなりました。けど、なんとか1着で駆け抜けることができて、人気に応えることができてホッとしている半分、期待に応えられて本当に良かったって思う気持ち半分です。それが今後はないように、自分が持ち味をしっかり出して、また優勝を目指して頑張りたいと思います」
ただひとり次元の違う世界にいる脇本。17に伸ばした連勝は、どこまで伸びていくのだろう。
赤板過ぎにインから寺崎の番手を奪取した松浦悠士は、単騎での奇襲で近畿勢を分断。番手まくりで優勝が見えたが、最後は脇本にのみ込まれた。
「(赤板前のところは内が)空くかと思ってた。あとはどれだけ空くかなと。自分のやることをしっかりとやって優勝したかったんですけど、悔しいですね。単騎なりのレースができたかと思う。ただ、欲を言えば吉澤(純平)さんに付いて欲しかった。(番手から)まくる時に寺崎君に当たったのが痛かった。あれで一瞬、止まってしまった」
北日本3番手の守澤太志は、前の2人のアクションを待ってから直線で中を突っ込んだ。
「松浦君が番手に入ったことで、自分たちにいい流れになった。でも、(北日本の)みんな力不足でした。1、2着の脇本君、松浦君が強かった」