逃げても強かった脇本雄が完全V
初日特選から無傷の3連勝は、すべて前受けから後方に下げて異次元のまくりだった。迎えた決勝は、4車で結束した中四国勢が、前団に構える変化球で“脇本崩し”にかかった。脇本雄太は、それまでの3日間とは違う8番手のポジションで周回を重ねた。
「あんまり予想をしてない展開だった。清水(裕友)君の前受けの展開は考えてなかった。(あの並びで)僕がちゅうちょして、坂井(洋)君が行ってくれればまくりかなと。坂井君がちゅうちょするようなら、(自分が仕掛けて)行くしかない」
5番手で車間を空けた坂井は、まだ動かない。赤板2コーナーで脇本は腹を固めて大外を踏み込んだ。清水もペースを上げるが、脇本の加速はケタ違い。稲川翔とともに出切って、最終ホームを迎えた。
「僕のなかで稲川さんとの信頼関係。稲川さんならなんとかしてくれるし、ワンツーを決めたいっていう思いでした」
後方に置かれた東日本勢には出番がない。3番手に飛び付いた清水も前との車間はなかなか詰まらず、優勝は近畿の2人、脇本と稲川に絞られた。
「1着を期待する声援が多くて、なんとかそれに応えなきゃって思いでした」
直線で外に持ち出した稲川だが、わずかに詰め寄っただけで、脇本を脅かすまでには至らなかった。脇本が4連勝で先頭のゴールを駆け抜けた。
「脚の感触はともかく気持ちは、いい方向につながったのかなと。ようやく近畿でのラインでワンツーをすることができて、収穫を得たのかなと思います」
近畿1人の初日特選は、ラインを組んだ成田和也、鈴木裕との上位独占。しかしながら、二次予選での稲垣裕之、準決の高久保雄介の地元勢との勝ち上がりはかなわなかった。それだけに稲川とのワンツーは、脇本にとって大きなプラス要素だろう。
「僕のなかでは次のG1、競輪祭で優勝できるように脚を仕上げていきたい。共同通信社杯から連続での疲れもあるんで、1回休養を入れてから、またしっかりと仕上げていきたい」
地元の村上兄弟が不在のシリーズ。近畿の柱として計り知れない重圧のなかで、昨年に続く完全Vで向日町記念を連覇した。今年はダービー、オールスターと2度のG1出場でともに優勝。10月の寬仁親王牌への出場権のない脇本は、3冠目となる11月の競輪祭に照準を合わせる。
連日、番手の選手が脇本の加速に置いていかれるシーンが目に焼きついていただろう稲川翔だったが、危なげない追走。直線勝負に持ち込んだ。
「(中四国の前受けは)相手も一流なんで、同じ負け方はしないだろうと。(脇本の先行で)ああなった以上、僕の責任が強くなった。いつも通り番手としての役割を果たしてと。最後に抜くだけに徹すれば、いろいろ考えることも少なくなるけど。ワッキー(脇本)があんだけ長いこと踏んでいるので、自分もそういうわけにはいかない。最後は思い切り抜きにいったけど、抜けなかった。あらためて強かった。ワッキーを抜くことをずっと目標にやっているけど、まだそこにはいけてない」
3番手の清水は、近畿勢との車間を詰め切れず最終4コーナーでいっぱい。清水マークの桑原大志が、追い込んで3着に入った。
「どうやったら(脇本を)倒せるか、みんな考えてた。でも、タイムが違いましたね。小倉(竜二)君まで(ラインを)固めてくれて、ありがたかった。(清水が)もう1回追いつければと思ったけど、(脇本が)すごかった。ただ、清水君と連係できたのはうれしかった」