通過点のG3初制覇
21年に共同通信社杯を制覇してから約1年5カ月。山口拳矢はゴールとともに右の拳を突きあげて、G3初優勝の喜びを爆発させた。
117期の3人にそれぞれラインができた決勝戦。号砲とともに飛び出た山口がスタートを取って、同期の両者の出方をうかがう。青野将大ラインの後位に飛び付き、単騎の石塚輪太郎と内で併走する形になったが、冷静さを失わず、自分の位置取りに集中した。
「昨日(準決)みたいな展開になっても、どこかで仕掛けようと思っていた。中団から動くよりは、前を取って脚をためようと思っていました。(石塚)輪太郎さんとの併走で苦しかったけど、単騎でも前には入れたくないと思っていた」
阿部将大が巻き返して石塚が遅れると、俊敏に阿部ラインにスイッチ。最終バックで番手まくりに出た隅田洋介が押し切るかに思われたが、3番手から鋭すぎる伸びを見せ、鮮やかに突き抜けた。
「(隅田の番手まくりで)自分のコースも空いたと思うし、それで最後のゴール前勝負になった。(全日本選抜に出場するG1組が不在でも)G3はG3なんでね。うれしいですよ」
表彰式のプレゼンターは父の山口幸二氏(62期、引退)。さらには、花束贈呈に村上義弘氏(73期、引退)が登場。親交の深いレジェンドが、G3初制覇に文字通り華を添えた。
「(父とのやり取りは)慣れたもんですよ(笑)。(村上)義弘さんには、アマチュア時代とか、自分がまだ会ったことがない時から気に掛けてもらっていましたし、うれしかった。S級初優勝もここでしたし、思い出深いバンクになりました」
デビューから史上最速でG2を制覇したものの、昨年は怪我にも苦しんだ。早くG3を勝ちたい思いはあっただろう。だが、もちろんそれは通過点。この優勝で弾みをつけて、狙うはもっと上の舞台だ。
「またウィナーズカップからビッグレースに参戦できる。去年はビッグの予選で飛んだりしていたし、決勝の常連になりたい。G1の決勝で結果を出したいですね。今年の目標はG3の優勝と、G1の決勝に乗ること。まず一つ達成できて良かったです」
抜群のレースセンスに、爆発的なスピードとキレは、G1の舞台でもすでに通用している。G3をまだ優勝していなかったことが驚きなくらいだ。そして年内に初タイトルを手にしたとしても、きっと誰も驚かない。
自力に転じた隅田洋介だが、直線で山口に強襲を許して2着。
「(阿部は)青野を叩き切ると思ったんですけどね。(自分は)併走でも脚がたまっていた。(山口を)内に詰まらせるように仕掛けたけど、もっと勢い良く行った方が良かったかもしれないですね。あれで押し切れないんじゃ自力で長い距離も踏めない。まずは競輪祭の権利を取れたので。(次の目標は)地元(玉野)記念を獲りたいですね」
隅田を追った久保田泰弘が3着。初のG3決勝で確定板に食い込んだ。
「(初のG3決勝は)楽しかったです。みんなすごいなと。前の2人のおかげでした。ちょっと夢を見ました(笑)。でも、この(1着との)差はだいぶデカい。(調子がいい原因は)練習をまじめにやり始めましたね。競輪祭も出れるんですか? マジですか。良かった。これは、デカいっすね。だいぶ頑張らないと」