北井佑季が圧巻の逃走劇!!
「ここで泣いてしまうとそれに満足しているようになってしまう。涙はグッとこらえました」
逃げ切りで決めた初のG3優勝を、北井佑季は汗をぬぐって爽やかに振り返った。
赤板でインを切った坂井洋の上を地元勢が押さえる。前で待ち構える山田久徳を絶妙なタイミングで叩くと、そこからはもはや独壇場だった。
「京都勢が絶対に出させてくれるとは思ってませんでしたし、突っ張られることも考えながら叩きに行きました。山田さんが3番手に入ったことは分かりましたし、あとは太田さんと、坂井さんを気にしながら。引き付け気味に駆けて、カマシに来たら山田さんのヨコに被さるように踏んで、2角まくりにも合わせられるように踏みました」
3番手に入った山田は車間が空いて仕掛けられず、最終2コーナーからまくった坂井も勢いはない。ゴール前は北井と佐藤慎太郎の2人の争いとなった。準決勝では佐藤に微差交わされたが、決勝は1車輪差を保ったままゴール線を駆け抜けた。
「素直に1着が取れて嬉しかったです。北日本勢が3人いて、結果的にみんな分かれることになった。それなのにSSの(佐藤)慎太郎さんが僕の後ろを選んでくれた。レースが始まる前から嬉しかった。単騎になっていてもおかしくなかったですし、慎太郎さんのおかげだと思ってます」
「今年中にG3を獲る」という目標をまず一つクリア。ただ、これがゴールでないことは言うまでもない。大きな期待を背負って走ったオールスターで勝ち上がれなかった悔しさは、ビッグレースの舞台でしか晴らせない。
「ここ最近、神奈川が盛り上がり始めてると思うんです。オールスターはあと一歩足りなかった。今日(最終日)の決勝であったり、G2、G1は脚力が拮抗してくる。その中で上手いレースとかも必要になってくるとは思う。でも、そういうところで自分の持ち味の思い切りの良さを出して勝てたことが良かった。(ビッグレースでも)みんなで盛り上げていきたい」
直後には練習地である立川での記念を控えている。そしてその次は共同通信社杯。緊張感を緩められない戦いが続いて行く。
「(配分が)空いてしまうと、レース勘だったり、ペース配分が狂ってしまって初日が駄目な時がある。詰まっている方が良いですね。(共同通信社杯は)まず決勝に乗ること。そこで思い切ったレースをして結果が付いて来ればと思ってます」
ビッグレースの決勝で、今日のような逃走劇を。これからの南関を、この男が引っ張っていく。
佐藤慎太郎は差し切れずに2着。素直に北井の強さを称えた。
「車間を切れる感じじゃなかったですね。ペースに持ち込んでいたんで。踏み直しも良かったですし。抜くタイミングを取ることができなかった。北井君が強かった。北井君はこれからいくらでもチャンスがあるから自分自身がこういうチャンスをモノにしないとって思っていたんですけど。悔しいですけど、今後の課題としてやっていきたい」
坂井のまくりを止めて山田を交わした村上博幸だが、3着が精一杯。
「理想の位置は取れたと思うんですけど。北井君のピッチは把握していたつもりなんですけど、それ以上に強かった。(山田)久徳もよく頑張ってくれましたけど。もう一車(山田と佐藤との車間が)詰まっていたら(最終)2コーナーでは伸びそうな感じもあったんで。まあでも良く伸びました。今回がラストチャンスかなっていう感じもあったんで残念ですけど。(平安賞は)一年、一年成長の場だと思っている。脚力を上げるのは厳しいですけど、違う所では上がっていると思うんで、今回も成長したところを出せたと思うんで。自分も悔しいですけど、久徳の方が悔しいと思う」