6連覇で自身の記録を更新
舞台を玉野に移した今年も、表彰式でファンの声援に応えたのは清水裕友だった。ホームバンクの防府が、改修工事のため、33バンクから400バンクになったが、ラインの厚みを生かして防府記念6連覇の偉業を成し遂げた。
「防府だとプレッシャーに負けそうなところもある。(玉野だったんで)いつもより肩の力を抜いて、リラックスできたと思う」
前検日からV宣言も飛び出していた清水は、自身もこう振り返ったように、その重圧を力に変えての完全優勝だった。
「すごくチャンスがある位置だったんで、みんながそれぞれ仕事をして、ゴール勝負ができるようにと思ってました。とにかく連係を外さないように。そこだけでした。それで全部が崩れてしまうので、まずは追走に専念した」
最内枠の清水がスタートを出て、中四国勢は思惑通り前団に構える。犬伏湧也が赤板で高久保雄介を突っ張って出るが、高久保は番手に降りる。2コーナーから逃げる犬伏の後ろが、取鳥雄吾と高久保の併走になった。3番手の清水も、村上博幸との併走でラインでの連係に神経を集中させた。
「高久保さんの抵抗がすごくて消耗した。すごいキツいレースになりました。前の2人が強くて追走いっぱいみたいな感じでした」
高久保が力尽きて後退。最終ホームではラインの4人がすべてクリアになっていたが、近畿のもう1つのライン、古性優作がまくりで襲い掛かった。
「古性さんのスピードが良くて、ちょっと自分の体を越えられそうになった。当たって止まってくれればと。(後ろの)松浦(悠士)さんには申し訳ない感じの仕事になりました」
取鳥が2コーナーから番手まくりを打つ。それでも古性が外を迫ると、2度のブロックで阻む。内を堅守した松浦の存在も、清水にとっては心強かっただろう。
「正直、抜けないまであるかなと。優勝できてすごくうれしかったけど、すごくキツかった」
今シリーズは二次予選でもワンツーを結実させた取鳥とのゴール勝負。最後の力を振り絞り、きっちりと交わして優勝を果たした。
「毎年、(防府記念を)優勝して、毎年、競輪祭。同じルーティンなんですけど、競輪祭はいつも(成績が)悪い。(競輪祭を)優勝してグランプリにいきたい」
現在の獲得賞金ランク6位。S級S班返り咲きと年末のグランプリ出場がすでに濃厚だが、守りに入るつもりはない。20年2月の全日本選抜以来となるタイトル奪取が待ち望まれるだけに、防府記念6連覇がこれ以上ない弾みになったのは言うまでもない。
中四国4車の番手の重責を担った取鳥雄吾が2着。高久保との併走も番手を守り切り、清水とのワンツーをメイクした。
「めちゃくちゃキツかったです。(高久保が番手に降りて来て)これは来るヤツだって。早めにどかさないとって思ったんですけど、犬伏が掛かってたんで良かったです。古性さんが来そうだったんで、(最終)2コーナーで踏んだんですけど(犬伏に)合わされそうでした。(責任ある位置を任されて)逆に吹っ切れました。犬伏も頑張ってくれたんで、自分も(清水)裕友にチャンスがあるようにって。最後はいっぱいだったんですけど、なんとかっすね」
ラインのシンガリを務めた松浦悠士の細やかな仕事が光った中国勢の上位独占でもあった。清水が古性のまくりをブロックすると、別線の内からの強襲コースをつぶして3着に入った。
「高久保さんがあんなに踏み合ってくるとは思ってなかった。1回、突っ張ったら、ペースで駆けられると思っていたんですけど甘かったですね。犬伏君の掛かりすごくて取鳥君も若干、合わされる感じだった。(最終3コーナーは)稲川(翔)さんが降りてくるので、そのコースを消してと思ってた。裕友が踏んで、自分は抜けきってから踏んだんですけど。2着には入りたかった」