初戴冠のバンクで4度目のG3制覇
思い出のバンクで復活の狼煙(のろし)。昨年8月に初めてG1を制した西武園にS級S班になって戻ってきた眞杉匠が、別線で戦った地元勢の夢をものみ込んだ。
「(地元勢は前を取って)“全ツッパ”だと思いました。それだと自分は車番が悪いので、後ろから押さえにいって突っ張られるのかと…」
5車の地元勢が前団に構えるかに思われたが、後方からの攻めを選択した。前受けは深谷知広。3番手で周回を重ねた眞杉は、あくまで冷静だった。
「(あの並びになって、仕掛けた地元勢に)付いていったところで、6、7番手で併走してもしょうがない。(地元勢は)ドカンと行って、番手まくりだと。それで前を取ってしまうと、飛び付かないといけない」
5番手から上昇した黒沢征治が赤板過ぎに飛び出して、そのまま緩めずに駆ける。中団取りには色気を見せず、眞杉は8番手で我慢。森田優弥の番手まくり、深谷の仕掛けを見極めて、ギリギリまで脚力を温存。その時を待った。
「(6番手の)深谷さんよりも先に踏んじゃダメだなって。深谷さんが踏むまでワンテンポ、ズラして(仕掛けて)行った。ちょっと車間を空けながら、詰める勢いで行きました。(前団が)ゴチャついてたんでだいぶ遠回りになってしまった。けど、届いて良かったです」
最終3コーナー過ぎからまくり追い込んだ眞杉が、まくり切った深谷をとらえたところがゴール。S級S班になって初めての優勝に自然と右手が上がった。今シリーズは関東勢が4人になった初日特選から地元勢とは別線だった。決勝でも、昨年のオールスター制覇の時に後ろを固めてくれた平原康多、武藤龍生は別線。その数的な不利を跳ねのけた。
「前回(川崎記念)も準決で負けてしまって、(その前の)ウィナーズカップでは落車。流れが悪かったので、ここで流れが変わってくれれば」
今年に入って1月に練習中の落車で大怪我を負って、S級S班としての始動が2月の全日本選抜と遅れた。さらには前々回のウィナーズカップでも落車に見舞われて、焦る気持ちもあったに違いない。しかしながら、今シリーズから投入した新車がマッチして、S級S班になって初めての優勝。昨年の競輪祭でも見せたクレバーで緻密な組み立てと、肝の据わった大胆さを持つ眞杉にようやく笑顔が戻ってきた。
最終1コーナーで森田が番手から発進。地元勢に続いた深谷知広は、2コーナーから一気の仕掛け。武藤、平原に再三、けん制されながらもまくり切った。が、さらに外を眞杉にいかれた。
「地元が(スタートを)出なかったのが意外でした。(分断策は)半々、ペースとその場の雰囲気。なるべく力勝負がしたかった。あとは眞杉がいつ来るかだったけど、なかなか来なかった。(まくりを打って、武藤と平原のブロックを)乗り越えて、また進む感じがあったのでイケるかなと思った。けど、眞杉が強かったです」
思惑通りに運んだ地元勢ではあったが、誤算は深谷のパワー。ラインの結束力で止めにかかったが、その上をまくられた平原康多は悔しがることしきり。
「(番手から出るタイミングとかは)森田がどう判断するかだった。あとは後ろの僕と(武藤)龍生で(別線を)ブロックと。想定したレースの1つだった。ただ、それ以上に深谷が。龍生も一発入れて、僕も2回いった。それでも止められなかった。(ラインの)みんなが悔しいし、自分たちの力不足です」