冷静に勝つ競走に徹してV
鈴木竜士
相手は、グランドスラマーの新田祐大に、二段駆け態勢の地元コンビ。7車立てと言えど、鈴木竜士に、組み立てのミスは許されなかった。鈴木は、インを切った地元コンビに、中団から切り替えて、一旦新田を内に封じ込める。新田の動きに細心の注意を払いながら、瞬時に策を頭で練った。
「作戦とかはなかったし、(周回中は)とりあえず後ろ攻めにはならないようにとだけ。あとは、流れで考えようと思ってた。新田さんが、内にいてくれればラッキーだなと。引かないなら、カマしていって外から島川(将貴)をキメて、そこから勝負。引いてくれたんで、あとは島川がいったところからの勝負でした。ああなったら、島川は番手から踏むしかないんで。それを見てから外を踏んでいけばいいかなと思ってました」
新田が6番手に下げ切って、久田裕也は、打鐘2センターからハイペースで先行。番手の島川将貴は、ギリギリまで引きつけてから、最終3コーナーで前に踏み込む。焦らず島川を追った鈴木が、ゴール前で抜け出した。いつも通りのアドリブながら、ち密な組み立てで勝利を手繰り寄せた。これがG3初優勝。17年にヤンググランプリを制して以降、グレードレースでの優勝はなく、F1での優勝も、一昨年の7月立川以降は遠ざかっていた。あくまでも先を見据える鈴木は、クールにこう語った。
「そこまでの特別感はあんまりないですね。優勝できたことが嬉しい。僕自身、久々の優勝でしたし、東京の後輩が見ている中で、結果を出せたことは良かったですね。ただ、結果、1着だったってだけで、まだ何一つ満足できるものはないです。一つの結果でしかないので」
昨年から戦法を自力に戻したことも、さらに高いレベルの目標を達成するため。G3初優勝の結果も、あくまで過程にすぎないのだろう。意識を高く保って、この先の戦いに挑んでいく。
「(戦い方は)相手次第にはなる。けど、真っ直ぐ走る力が強くなければ、上では戦えない。その辺は常に意識して、上げていきたい。一日、一日を、脚力を向上させていく時間に割いていきたい」
天性のレースセンスは、誰もが認めるもの。鈴木の追い求めるところまで脚力を引き上げて、タイトル戦線に名乗りを上げる。
新田祐大は、7車立て特有のペースに手こずったのか、中団から下げ切るのが遅れてしまう。3コーナーから中のコースを突っ込んだが、2着まで。
「引こうと思ってたんですけど。前が全然駆けなかったんで、引くタイミングがズレてしまった。どしっと引いていれば、もっと展開も違ったようにできた。前が掛かってなくて、躊躇しながら仕掛けていってしまって、ああいう(中のコースを踏む)形になりました。点数的にも断然だったし、優勝は必須だった。準決で大川(剛)君と決められなかったのも、こういう形になってしまった要因だと思う」
鈴木マークの金子幸央は、2センターから外を回して伸び切れず。優勝もあった展開だけに、3着では納得できない。
「島川君も車間を切っていたし、(鈴木)竜士も仕掛けづらい感じでしたね。竜士が踏んで、彼が仕掛け切るまで待てば良かったのに、外に誰かがいる気がして焦って踏んでしまった。彼が仕掛け切って、内に行けば、1着か、2着はいけた。3着する展開ではなかったですね。結果的に新田さんに自分が行くべきコースを踏まれたので。連日、練習成果が出せたと思うだけに悔しい。また練習してきます」