一瞬の間隙を突いて10年ぶりのG3制覇
南修二
初めて記念を制した富山から、およそ10年ぶりでのG3優勝。それでも南修二は、開口一番、厳しい表情でこう言った。
「内容のないレースなんで、悔しいです。(久しぶりのG3優勝は)とにかく内容がなかったんで、なんとも言えないです…」
同地区の脇本雄太が18年に初タイトルを獲得してから、7年足らずでグランプリスラムを達成。同じ大阪の後輩、古性優作もグランプリをはじめ数々のタイトルを手にしてきた。それだけに彼らがいない時のシリーズでは、結果もそうだが、近畿の南として内容も追求してきた。
「(決勝では自分がラインの先頭で)流れに乗りながらと思ってた。けど、全部、立ち遅れていたので情けない」
7番手に下げた太田海也が、赤板2コーナー過ぎからフルダッシュ。取鳥雄吾、松本貴治も離れながら追いかける驚がくのスピードに、南はただただ彼らが通過するのを許してしまった。
「(太田との)力の違いを感じました。どうにかできるスピードじゃなかった。(最終3コーナーで)外をのぼると、やめたようになるスピード域だった。(三谷)将太には申し訳なかった」
中四国勢が出切り、それをまくりで郡司浩平が追いかける。南は最終2コーナー手前で郡司、和田真久留の後ろにスイッチ。郡司が松本のブロックで失速すると、和田真が3コーナーでインを進出。和田真が取鳥をさばいて空いたコースを南が突いて、直線の入口で太田に並びかけた。
「とにかく結果だけでした。力のなさしか感じない」
和田真の動きで松本、三谷将太が落車。ゴール前で太田をとらえた南が優勝。大舞台での経験が生きた瞬時の判断ではあった。が、ラインにチャンスのある仕掛けができなかったことは、悔いが残る大きな要因の1つだろう。
「トレーニングをするしかない。近畿はみんな強いので迷惑を掛けないように。練習仲間がいっぱいいるんで、切磋琢磨していければ。(課題は)底上げですね、地道にやるしかない」
脇本、古性らとともに近畿勢を盛り立てたい。その強い気持ちがあるかぎり、南の進化が止まることはない。
前受けから7番手まで引いて巻き返した太田海也は、エンジンの違いを見せて打鐘4コーナーで主導権を奪取。ラインでの上位独占を目論んだが、最終2センターでアクシデント。最後は南の追い込みに屈した。
「自分の行けるところから一撃でと思ってました。仕掛けた感じは悪くなかったんですけど、後半タレたのが良くなかった。(取鳥が追いついたのは)見えてました。(取鳥)雄吾さんが後ろにいてくれたんで、ラインから優勝者が出るように踏んでいました。残り1周をオーバーピッチで入った感じでした。もっと精度を上げていきたい」
太田の踏み出しには車間が空いた取鳥雄吾だったが、最終ホーム過ぎには追いついて絶好の態勢。しかしながら、和田真にすくわれて、立て直しての3着が精いっぱい。G3初制覇が、またしてもするりと逃げた。
「(太田に追いついてから松本)貴治さんがいるよなって確認して、落ち着こうとしたら(最終)2コーナーではもう郡司さんが来ていた。(郡司を)振らないとと思った。振って、戻って、追い込んで、ピッタリ(ゴール)かなと思ってたら、南さんと(和田)真久留さんが入ってきちゃった。(太田が)もつと思ってたし、それぐらい掛かってた。郡司さんさえ(止められれば)と思っていたけど甘かった」