ピックアップ GⅢ 伊東 12/02
競輪祭準Vで涙を飲んだ松井宏佑が、ハードスケジュールを押して参加した今開催でも、同じく準V。だが、決勝の内容は、深谷知広マークから番手まくりだった競輪祭とは真逆の内容だった。4車ラインを引き連れての2周半先行は、鬼気迫るものさえ感じられた。次の時代の南関を、文字通り引っ張っていくという、松井なりの決意表明だったのかもしれない。
特進して5月からS級の舞台に立っている日高裕太だが、PIST6で落車して9月から欠場を余儀なくされていた。迎えた復帰戦が地元記念デビュー戦。万全の状態で臨みたい気持ちはもちろんあっただろうが、随所にポテンシャルを感じさせるレースを見せた。最終日に逃げ切りで挙げた記念初勝利は力強かった。
「PIST6で転んでしまって、プロになって初めての落車と骨折だった。しんどい2カ月間だったけど、ここに向けてやれる練習はしっかりやってきていました。初日から最終日まで強い選手と戦えた。自分の武器は若さだと思っているし、それを出して戦えて良い期間が過ごせました。みんなから、すんなり駆ければ強いって言ってもらえたけど、自分の弱点は一回脚を使ってからもう一回踏んでいく脚。2日目も、良い位置が取れたけどまくりが全然出なかった。強い人たちにぶちのめされながら、レースを覚えていきたいです」
久米康平は、前回の高知F1終了後から万全の調整を施してここに参加した。結果は未勝利ながらも、好調時の動きを取り戻していた印象だ。犬伏湧也の途中欠場で連係は実現しなかったが、もしそれが叶っていたらどうだったのか。犬伏とのラインを機能させる。戦うステージを上げるには、それは絶対に必要なことだ。
「先月の静岡で、北津留(翼)さんと話す機会があって、自転車の理論とか、そういうものを教えてもらいました。(伊東記念の)次の開催から、ハンドル幅を狭めたり、かなり大幅に変えて試してみたいことがあるんですよね。ビルダーさんとも話して、ハンガー周りを変えてみたり、調子が良い内に試したいことがいろいろと湧いてるんです。今回は、犬伏(湧也)が欠場にならなければ、頑張って勝ち上がって、犬伏の後ろで自分の今までやっていたことの答え合わせをしようと思っていました。今回は残念だったけど、彼の後ろを回った時に何ができるかっていうのが、自分の中で一つの目標だと思っています。今の点数よりももっと上げないと、犬伏とはなかなか連係できないと思っているので、もっと頑張らんとですね」
番手回りも多くなった中井太祐だが、今節は前半の3日間が自力戦で鳴かず飛ばず。最終日は山田久徳の番手から、先行を差して1着となった。近畿の先輩の後ろからつかんだ1着に、複雑な表情を浮かべる。
「(山田)久徳さんには前でやりたいってことは伝えました。けど、それでも久徳さんが前でやりたいってことだった。僕の普段の競走が不甲斐ないからですよね。口でそう言われてはないですけど、任せてもらえないってことはそういうことなんで。初日は位置を取れたけど、2日目、3日目と反省点はたくさんある。自力も番手もなんでもこなせるような選手になりたいし、追い込みになりたいわけではない。そういうスタイルでも、先輩に安心して任せてもらえる選手にならないと」
最終日の9レースでは、レインボーカップファイナルが行われた。山本修平は、来期のS級点を確保できていなかったが、勝負駆けを成功させて2着で特進を決めた。優勝こそ逃したが、単騎で最終2コーナー過ぎから仕掛けて、内容の伴った走りで自らの道を開いた。
「単騎では下手に動けないけど、チャンスは必ずあると。悔いの残らないようにと思ってました。佐伯さんはラインがあるし、踏み合いもあるなと思ってた。そこを見極めて自分の間合いを図ってました。脚がたまってたんで、行けるかなと。2着ですけど、このチャンスをつかめてよかった。(S級は)スピードが上がってくると思うので負けないように力をつけたい」