郡司浩平が制した２月の全日本選抜に続き、ダービーは平原康多。昨年のＳ班陥落組が、続けてカムバックを決めた。「スピード競輪になって、それを何年も追いかけてきたんですけど。それで体を壊したってところと、落車で壊したのもある」。結果的には前回の西武園記念から10年近く前の自転車と乗り方に戻す“原点回帰”が功を奏した格好だ。ただ、今シリーズも存在感を示した昨年のＭＶＰの古性優作は、ナショナルチームとの練習を取り入れてさらなる強さを身につけようとしている。欠場を余儀なくされた脇本雄太。年々選手の体への負担も大きくなっているように感じるスピード競輪の行きつく先に、ゴールはあるのか…。

　デビュー16年目にして岩本俊介が、初めてＧ１ファイナルのキップをつかんで準Ｖ。「やられすぎちゃっているんで、今度こそって。ここだけは頑張らないと。いままで、ただで負けていたわけじゃないぞって」と、からまれながらも、狭いコースを耐え忍んだ二次予選のあとの言葉が心に残った。4000万円以上の決勝２着賞金を上乗せして、獲得賞金ランクは４位。まだ気が早いものの、獲得賞金でのグランプリ初出場が見えてくる。

　「（デビューして）出はじめのころから自力選手でここまできたので、マーク選手や自在戦で追いつくのは無理だし、技術不足だけど、やれることはやろうと。この歳まで自力でやってきて、（準決の）こういうところで深谷（知広）の番手を回れて、普段タテでやっている分、少しは自転車が出た。（決勝は）２着だけどビックリ。Ｇ１の初決勝でお客さんの車券にからめたのはうれしい。運が良かったです。そういう展開で脚をためられていた。（賞金上積みでＳ班を狙えるって）同期の佐藤一伸に言われました。けど、僕は下からはい上がってきたので、そこは気にせずですね」

　岩本と同期の佐藤一伸は、デビュー16年目にしてＧ１初勝利。飯野祐太を二次予選に勝ち上がらせて、取鳥雄吾をつぶした一次予選から動きが際立っていた。「地元のＧ１は２度と走れることがないと思うので、悔いのないように」との思いで、アグレッシブに攻めて結果を残した。

　「地元のダービーに出られるだけでも自分のなかでは頑張った方なのに、Ｇ１初勝利ができるなんて。（ゴールした後に）ガッツポーズしちゃいました（笑）。地元なんで８割増しくらいです。２月くらいからペダリングとかセッティングを改善して、成績が悪かったけど、それがようやくここに間に合った。少しずつ形になってきた。まだまだですけど、飯野さんとか先輩たちに聞いて、いい方向にいっていると思います」

　３月のウィナーズカップでは無傷の優出でビッグ初ファイナル。一次予選では遅まきながらＧ１初白星の窓場千加頼は、二次予選で渡部幸訓（失格）の猛ブロックでまくり不発。あれがければという思いに至るインパクト大のシリーズ２勝目を３走目に挙げた。

　「（３走目は）組み立てとしては、まだ挑む立場なので、犬伏（湧也）君の先行をどういう風に仕掛けていくか。その内容も問われると思っていた。初手も理想的な位置ではなかったんで、早め、早めと思っていた。後方になった時点で前まで叩きに行くつもりだったけど、（最終）ホームで犬伏君が加速した。その加速がすごかったので横の動いは少ないと思って、（外併走で）ピッタリいきました。（二次予選は）まくりだとリスクがあるっていうのも当然ですね。自分はメンタルで左右されることが多いので、（成績が出ているのは）まだ半年くらいですけど、しっかりと強い気持ちで冷静に戦っていきたい。強い選手はこれを何十年もやっているので。京都の先輩や古性（優作）さんたちにいいアドバイスもいただいた。これを積み重ねていくことが大事。メンタルを切らさずに向上心をもっていきたい」

　一次予選では７番手でフリーズした佐々木悠葵だったが、その後は積極策も含めて２連対。押さえ先行で１周半以上を駆けて、ラインで上位を独占した２走目と最終日はともに宿口陽一とワンツー。「100点ですね」と、宿口も佐々木を称えた。

　「一次予選は自転車の乗り方がわからなかった。（２走目からは）しっかりと周回から楽な感じがした。Ｇ１では周回から早くなるし、中団から（押さえて）先行したのは人生初だと思う。それで（ラインで）上位独占ができたのは、自分でも成長したなって思います。これが一次予選でもできれば良かった。（小林）泰正さんは自分より何倍も練習しているし、（Ｇ１の決勝に）乗るのも当たり前だと思う。ただ、自分も練習していることがちょっとでも出せたかなと。（２走目みたいに）これからはジャンから逃げられるようにしたい」