主役はただひとり
20年東京五輪の出場権をかけたポイント争いも始まり、ナショナルチームで世界を見据える脇本雄太は、本業の競輪で今年はわずかに4場所のみの出場。その4場所も全日本選抜、ウィナーズカップ、ダービー、高松宮記念杯とすべてビッグで、記念出場は昨年7月の地元以来となる。海外遠征とハードトレーニングのなかでのスポット参戦でも、連覇で4度目の地元記念Vに多くのファンの期待は高まるばかりだ。5月のダービー着、6月高松宮記念杯着の直近の2場所の内容を考えると、それも当然でいまもっともタイトルに近い存在であることは誰もが認めるところだろう。ダービー準決では圧巻の先行策で渡邉一を叩いて、上り10秒9で村上博幸を寄せつけず逃げ切った。別線を置き去りにした決勝では、4着までをラインで独占して三谷竜に2度目のタイトルをもたらした。同じく三谷とタッグを組んだ高松宮記念杯決勝も臆することなく主導権を握って、別線に反撃の隙を与えずマッチレース。ゴール寸前で交わされ、初タイトルこそお預けになったが、輪界ナンバーワンの機動型を確かなものにした。昨年の当記念では、野原雅也の突っ張り先行を利して番手まくりでV。自力での初戴冠にこだわる脇本でも、同県の後輩、野原なら二つ返事で任せられる。ソツない援護ができる村上がいるのも、地元勢にとっては心強い。
ダービーの一次予選では荒井崇博のバンクレコードに大きく貢献。さらに1年半ぶりの記念Vを遂げた宇都宮では、初日に自らがバンクレコードを叩き出した中川誠一郎。皮肉なことに追い込み宣言をしてから、キレが戻り自力が冴えわたっている。宇都宮では南潤を後方に置いて、ロングまくりで押し切る豪脚を披露した。ただ、今シリーズは同地区に北津留翼がいる。セットになれば、力ある北津留に前を委ねて優勝を模索する形になるだろう。
3月のウィナーズカップで久々にビッグを制覇した武田豊樹は、6月の高松宮記念杯で1年ぶりのG1優出。昨年の大怪我から立ち直り、再び軌道に乗り始めている。決勝で吉澤純平後位を巡り木暮安由と競りを演じた。しかしながら、関東ライン崩壊というわけではなさそうで、今シリーズもメンバーに応じて連係があるとみたい。もちろん木暮の一撃にも注意が必要だ。
山中秀将、桐山敬太郎、岡村潤の南関勢も侮れない。ラスト1周のスピードに磨きをかける山中の仕掛けがはまればラインでの台頭がある。
新山響平、成田和也に当所記念Vのある山崎芳仁がいる北日本勢。桑原大志、阿竹智史の中四国ラインは戦力豊富とは言えないものの、底力があるだけに軽視できない。また結束力ある中部勢だが劣勢の感は否めない。