「¥JOY×プロスポーツ記者」が選ぶ極上バトル① ~KEIRINグランプリ1995・立川競輪場~

photo-13229
FⅠ先行でファンを魅了した吉岡稔真氏(2006年当時)
photo-13230
史上最多のGⅠ優勝回数を誇る"レジェンド”神山雄一郎は52歳の今でも現役だ
究極の力勝負 吉岡稔真vs神山雄一郎

 グランプリの当日の立川競輪場は異様な雰囲気だった。いつものギャンブル場が醸し出す殺伐とした感じとは少し違う。普段ならば夕暮れの黄昏時だが、この日だけは発走時刻が近づくにつれて、場内のボルテージは最高潮に達した。
 
 当時は神山雄一郎(栃木・61期)、吉岡稔真(福岡・65期)が"東西両横綱”と呼ばれ強烈なライバル関係にあり、ファンはその対決に胸を躍らせた。脇を固める他のメンバーも、オールドファンなら垂涎モノな面々がズラリ。グランドスラマーの井上茂徳(佐賀・41期)、滝澤正光(千葉・43期)、後に高松宮記念杯(GⅠ)を優勝した直後に引退を表明して伝説となった松本整(京都・45期)、"牛若丸”・児玉広志(香川・66期)は、この5年後に立川でグランプリを獲っている。
 
 この年は神山の安定感が抜群で、高松宮記念杯、全日本選抜競輪、競輪祭とGⅠ3冠を達成していた。人気の中心となり、初のグランプリ制覇だけでなく、史上初の通算獲得賞金2億円の達成にも大きな期待が寄せられていた。
 
 レースは9人全員が死力を尽くし熾烈を極めた。打鐘後2センターで内をすくい滝澤が前へ出ると、◎を背負う神山が最終ホームで一気に叩き切り主導権を奪取。その番手を確保したのは、初手から競った高橋光宏(群馬・56期)、児玉のどちらでもなく、勝負所で追い上げを決めた松本だ。1センターから吉岡が井上を連れてまくり、その動きに合わせて2コーナーから三宅伸-小橋正義もまくると最終バックは3列の壮絶なもがい合い。場内は歓声と悲鳴が入り混じった物凄い歓声だ。3コーナーで三宅が力尽き、勝負はいよいよ4コーナーへ。逃げる神山が自ら車を大きく振るが、吉岡は外へ避けながら山降ろしを使ってペダルを踏み込む。この瞬間からゴールまでは、何物にも代えられない極上の時間だった。
 
 決着はご存じの通り、けん命に粘る神山を吉岡が1/2輪差で捕えて2度目のグランプリ制覇を遂げた。過去に幾多の激しいぶつかり合いを見てきたが、このバトル以上に「力勝負」を感じたレースは他にない。

レース結果:1着 吉岡稔真 2着 神山雄一郎 3着 井上茂徳 2車単 1-9 2,190円

レース映像はこちら→https://www.youtube.com/watch?v=JxqZpnkjFJ4




堀江鉄二記者

2020年5月1日 12時00分

開催情報

ページトップへ