最強タッグを証明
今年のG1ファイナルの舞台だけで4度目のタッグ。武田と平原の絶妙なコンビネーションが、また新たなG1Vを生み出した。逃げた武田を平原が追い込んでワンツーの昨年の競輪祭決勝だったが、今年は平原がシリーズの流れをくんで武田の前で戦った。
レースはただひとりの20代、竹内を阻んで、村上義が果敢に先行策に出る。竹内の踏み出しに遅れた浅井と重なった平原は、瞬時の判断で稲川をすくって3番手を奪取。が、武田は稲川に割り込まれて最終ホームを通過。そこから稲川がインを突くと、からまれながらも力ずくでまくって出た平原に武田がドッキングを果たした。
「平原君もすごいキツかったと思います。その前に平原君も(浅井に)締められてますから。そこから稲川君にすくわれてのまくりは、かなり苦しかったと思います。僕も本当に脚は残っていなかったですね」
スピードに乗った平原が逃げる村上義をつかまえて、あとは平原、武田“2人だけの世界”。焦点は両者の優勝争いに絞られた。
「(自分の感じから)平原君の優勝は確実っていう感じだったんで、僕も必死に食らいついていった結果、ゴール前にちょっと伸びましたね。(それで平原との着順が)変わってました」
平原とのあうんの呼吸でもぎ取った高松宮記念杯に次いで、今年2度目のG1制覇。この一年グランプリのチャンピオンジャージを身にまとい、のしかかる重圧とも正面から向き合ってきた。その中でのタイトル奪取は、武田の強靭なメンタルと進化の証だろう。
「(今年)思うように走れなくて、苦しい時期はあったんですけど。そこはいままでの経験を生かして心を落ち着かせて練習に励んでいました。今年(高松宮記念杯で)G1をひとつ獲ってましたけど、まったく油断せずにG1優勝を目指して頑張っていた。その気持ちがグランプリにつながると思います。昨年は岸和田でしたけど、今年は関東に来るんで、関東の代表選手として。(関東は)3車いますから、そこを気にしながらなんとかしたい」
昨年と同じ平原、神山雄一郎と気心の知れた“仲間”と迎える年末の大一番。山田裕仁(02、03年)以来となるグランプリ連覇を見据える武田には、油断も驕りもない。GP決定も村上義は…
内から稲川に当たられながらも、近畿勢をねじ伏せまくりで飲み込んだ平原。そのパワーとスピードで別線を凌駕した。
「竹内があのタイミングだったら、村上(義)さんも突っ張るしかないと思った。あとは自分がそこから早めに村上(義)さんを乗り越えられるように行くしかないと。浅井に降りられたし、仕掛けようとしたところで、稲川にもってこられてキツかった。武田さんには差されたけど、2人でゴール勝負ができたんでよかった。池田君が自分のラインを選んでくれたし、やっぱりラインは重要ですね。池田君までワンツースリーで決まってよかったですよ」
G1決勝の舞台を初めて踏んだ池田は、関東の2人には遅れながらも村上博のブロックを乗り越え表彰台の3着。関東コンビへのチョイスが、勝負の大きな分かれ目となった。
「自分はとくに緊張しなかった。それがわかっただけでもいい経験になった。前の2人は本当にすごかったし、もっとレベルアップしていけるように。自分の地区にもああいう選手が欲しいですよ」
単騎の渡邉は前受けからポジションを確保できずに、最終ホームでは9番手の最後方。最後の爆発力にかけたが4着まで。
「難しかったですね…。(周回の並びは)一番嫌な展開だった。(単騎での戦いは)いい経験になったと思うんですけど。ラインができないからこそ、(優勝を)狙えるっていうところもあるんで…」
「(稲川)翔のところを突っ込めたら、良かったけど。ぶつかってしまって」と、打鐘の4コーナーでバランスを崩した浅井が振り返る
逃げて7着に沈んだ村上義は、武田、平原との力差を痛感。武田のVにより賞金枠で6年連続9度目のグランプリ出場を決めたが、その表情は険しい。
「(村上)博幸と翔にチャンスをつくってやれなかったのが申し訳ない。平原君、武田さんが自分より一枚も二枚も上でした。自分としてはG1を優勝して(グランプリへ)と思っていたので、それが達成できなかったのは残念です」