悲願叶いG1初制覇
10年6月の高松宮記念杯でG1初優参を果たして以降、これまで幾度となくG1奪取のチャンスはあった渡邉だが、ようやくG1のタイトルを自らの元へと手繰り寄せた。
「すごく嬉しいです。これまでG1の決勝には乗るけど、優勝が遠くチャンスをつかむことができなかったので。今までいつかは自分の順番がくると思っていたけれど、タイトルは自分から獲りにいかなきゃ獲れないということが分かりました」と言ったのは心からの言葉だろう。
昨年の寬仁親王牌でも今回と同じく北日本勢はライン4車。先頭も今回と同じく新田だったが優勝を逃がした。それだけに北日本勢全員に期するものがあった。
「新田君が頑張ってくれたおかげ。今日は新田君の後ろしか見てなかったです。新田君がホームでカマしたスピードは日本一だと思いますし、新田君が力を出し切ってくれればチャンスはあると思っていました。後ろでも安心して。それに後ろを固めてくれた先輩のおかげ。ゴール直後に(佐藤)慎太郎さんも(菊地)圭尚さんも新田君もおめでとうと言ってくれました」
世界を舞台に戦い競技との両立に苦しんで、ここ最近は力を出せずに終わることもあった。
「この2年は思うように体が動かないこともありました。その中で腐らず地道にやってきた成果だと思います。競技だけ、競輪だけじゃなく両方で結果を出せるように」
リオ五輪出場は厳しい現状も、競技の第一人者として一縷の望みをかける。
「正直、個人種目はすごく厳しいし絶望的で、チームスプリントも厳しい状況なんですけど。まだチャンスがあると思うんで、可能性がある限りは3月の世界選手権を目標に」と練習を続ける。
これからはタイトルホルダーとして歩んでいくが、すでに自覚も十分。
「今年最初のタイトルを獲らせていただいたので、SS班の次に責任のある立場になったと思うんですけども。それをしっかり胸にしまって、今後も責任あるレースをしていきたいです。北日本からもどんどん優勝者を出していけるように練習してきたいと思います。グランプリはまだまだ先だし、一つ一つ目の前のものをクリアしていきたいです」福島トリオで表彰台独占
渡邉に続いた佐藤が2着、3着に新田が入り福島トリオで表彰台を独占。佐藤は「(渡邉)一成は今後もG1をどんどん獲っていくと思います。今日のレースで新田は早いだけ、強いだけでもなく信頼される選手にレベルアップした。(菊地)圭尚も4番手について北日本の絆を見せることができましたね。前で走るだけがラインの為ではなく、3番手、4番手を固める選手もラインに貢献しているんで」と北日本ラインでの勝利を強調した。
新田は「(突っ張って)下がらない予定だったけど、脇本君が勢い良く来てた。でも下げたときも考えていたので、(仕掛けは)ちょうどあのタイミングになった。脇本君の先行意欲がすごくて、先頭に出るまでに時間が掛かってしまった。落車は予想外で残念だけど、思い切り気持ちよく走るレースでした」と3着にも満足そうな表情を見せた。
菊地は「新田君の仕掛けに口が空いてしまい、そのまま離れてしまった。しっかりと付いていかないと話にならないですね」と悔しげに振り返った。
脇本は後ろの先輩2人が落車したこともあって終始浮かない表情まま。
「しょうがないです。僕が主導権を取らないと近畿のラインとしてもダメなんで。ジャンまでは頭の中で描いていたレース通り。このままいけばラインで決まると思ったんですけど…。悔しいですね」
近藤は「ホームですごい空いちゃって力の差を感じました。ワンランク、ツーランク脚を上げていかないと」とG1初の決勝を終えすぐに前を向いた。