優勝は無欲の田中晴
根田が念願の記念初Vを飾ったのが、1週間前の2月5日。その根田を先頭にラインの力を誇示した千葉勢が、タスキをつなぐように2週連続でG3を制した。
「自分でも予想外ですね、小埜さんに獲ってもらえればくらいの気持ちでいた」
番手の小埜に圧倒的な支持が集まるなか、優勝のタスキを受け継いだのは3番手を固めた田中だった。
「後ろから(別線が)来たら小埜さんが出て行くような流れだった。僕は誰も小埜さんに並ばせないっていう気持ちでいた。そしたら堀内君をもっていって、新田さんを締め込んだら、僕が並んじゃった(笑)」
一度は石塚に出られた根田だが、赤板過ぎには再び主導権を奪い返す。根田のダッシュに遅れながらも小埜が必死に追いかけ、田中が続く。小埜が最終2角から番手まくりを打つと、田中は別線の堀内のまくりをブロック。返す刀で新田を内に閉じ込めて、直線の半ばで鮮やかに抜け出した。
「小埜さんは(番手から)出る前からキツそうだった。(優勝は)予想外だったけど、よかったです」
デビュー4年目の09年にはS級の舞台を踏んだ田中だったが、その後は何度かのA級暮らしも味わった。歳月は流れようやくG3制覇までたどりついた。
「今回は3日制のG3だし、全日本選抜組もいないですから。今度は4日制を獲りたいですね」
初日特選に次いで不慣れな3番手をセンスでこなした田中。無欲のVからさらに夢は膨らむ。
渡部は最終ホームでは9番手。空いた中のコースを強襲して2着に伸びた。
「9番手で全然、前が見えなかった。そこから(コースが)空いたけど、新田さんが態勢を崩していたから、見ながらだった。それでも9番手から伸びたんで」
千葉勢とは別線で4番手をキープした堀内は、最終2角からまくりを放つ。田中のブロックで失速も、最後まであきらめることなく踏んで3着に入った。
「仕掛けられたけど、うまく止められちゃった。田中さんを乗り越えられたらよかったんですけど…」
根田の踏み出しに遅れた小埜は、追いつくも脚力を消耗。勝負どころの番手まくりに響いて、本来の力強さに欠けて5着。G3初Vは、またもお預けとなった。
「前が強すぎました。自分が振って中団は確保しておかないとって思った。それで振ったら、(根田に)行かれちゃった…」
一度は3番手に入った根田だが、青板の4角からすかさず反撃。先行屋のプライドで石塚を叩いた。
「石塚君が来るのが遅かったんで、そこで自分は(先行の)スイッチが入りました。そのあとは(3番手に入ったけど)もう先行選手としての意地ですね」