12年ぶりの記念制覇
「もう獲れないと思った。獲れる時はこんなもんやね」
前回F1からの連続Vも、小倉はグレードレース制覇から遠ざかること10年以上。06年2度目の競輪祭優勝から長い歳月が流れていった。それだけに超新星、太田の存在は刺激になったことだろう。
「仕事をするまでもなかった。踏み上がりがハンパじゃなかった。まだまだ強くなりますよ」
早めに稲垣に併せ込んでフタをした太田は、山降ろしで主導権を奪取して逃げる。稲垣のまくりは、小倉のブロックを必要とすることなく3番手の横でいっぱい。あとは四国3車にV争いが絞られた。
「(太田には)まくりも来させない完全なレースして欲しいと。出て(先行をして)くれて、自分がなにもしないのは大きい。出し惜しみしないで行ってくれたのが、僕の優勝につながった」
同県の後輩だけに、太田に求めるものは大きい。その大仕事をやってのけた後輩を称えて、小倉は目を細める。が、自身は最悪の展開が頭をよぎった。
「あれはハコ3(着)のパターンやね。2センターからはどこまで(太田に)迫れるかと、香川さんにどこまで抜かれないか。抜かれてないっていうことは調子がいいのかもしれない。得意パターンが出なかったんでよかった(笑)」
デビューから3年半、23歳でG1制覇を飾った小倉も、気がつけば41歳。しばらくなかったG制覇だが、それを感じさせない追い込みは健在。20も離れた太田とともに、3度目のG1制覇へこれからも変わらず歩みを進める。
稲垣にかぶりながらも、香川はしぶとく差し脚を伸ばして2着。
「自分のタイミングで踏めれば良かったけど。稲垣君が横にいたんで、踏めなかった」
突っ張られないギリギリまで仕掛けを待つ度胸満点の組み立てたと抜群の掛かりで、太田が四国を上位独占に導いた。
「(四国の)誰かが優勝できればと。主導権を取るつもりでいました。ああいう先行を記念(の決勝)でできて良かった。ただ、もうゴール前はいっぱいだった」
「地元の意地が見せられなかった。しっかり位置を取って自信をもって仕掛けたんですけど…」とは、まくり不発の稲垣の弁。