驚異の加速で別世界へ
今年最後のG1は、新田のひとり舞台。6月高松宮記念杯から続いた4度のG1ファイナルステージはすべて“新田色”に染まった。
「深谷の動き待ちになって、全体的にレースが流れていた。深谷の動きを待ってるなかで自分のタイミングの位置まで来たんで、あとはガムシャラに踏んだ」
山中の主導権で、レースは比較的に単調に流れた。木暮に3番手を明け渡したものの、今の新田には6番手があれば十分だった。
「なかなか山中君との距離が縮んでいかなかったので、けっこうまずいかなと思った」
最終1センターから踏み込んだ新田は、タッグを組んだ諸橋を置き去り。自身の心配とは裏腹に、ケタ違いの加速力で2着以下をちぎってゴールを駆け抜けた。
「(優勝を確信したのは)本当にゴール線を過ぎた瞬間ですね」
上がりタイム10秒6を叩き出した今年2度目のG1制覇は、高松宮記念杯、オールスター、寬仁親王牌と同じ別線に手出しをさせない異次元のまくり。オールスター、寬仁親王牌は同県の渡邉一に優勝をプレゼントする結果になったが、今年は2人合わせてG1を4勝。その4勝はすべて新田がつくりだしたものだった。
「ナショナルチームのトレーニングも1月から始まって、新転地にも移りましたし、そのなかで結果を残し続ける大変さっていうのを実感した半年間だった。高松宮記念杯を優勝してから、常に勝ちを意識するレースをすることができた後半戦だったと思います」
ナショナルチームが新体制に移行して、新田にとっても練習環境をはじめさまざまな変化があった17年。3年連続4回目のグランプリで新田劇場は、今年のフィナーレを迎える。
「本当にいろんなことがあって、めまぐるしい1年間だった。変わったこと、変わらなかったこと。進化、退化とありました。そのなかで僕はグランプリに向けて目標を早い段階で掲げることができたので、そこに向けて本当にまっしぐらに練習一本という形でやってきた。その結果、このように競輪祭も優勝することができました」
このあとはすぐに競技での海外遠征。休まることのない新田だが、大一番のグランプリにはきっちり照準を定めている。世界を股にかける男の規格外の進化はまだ始まったばかりだ。2着は地元の北津留翼
新田が諸橋をちぎって木暮を飲み込むと、新田目がけて北津留も外を踏み込む。木暮後位から抜け出す平原はとらえたが、前を行く新田には届かなかった。
「(関東の後ろ)ここはいいなと思ってました。ホームで外が空いてるかどうかが勝負だと思ったけど、一本棒であれって思った。でも、ビビらず先に行けばよかった。声援もすごかったんで、新田より先に行かないといけなかった」
3番手を確保した木暮が先まくり。関東コンビは絶好の展開になったが、新田のスピードに屈した。3着の平原は新田の強さを称えながら、大粒の汗をぬぐう。
「強い。新田じゃなかったら(木暮と)ワンツーが決まってたかもしれない。力で勝てなかったんで、また頑張るだけ。新田にいい刺激をもらいました」
3番手を確保した木暮にとっては、初タイトルを狙える展開だった。先まくりに出たが結果は4着。それでもサバサバと振り返る。
「平原さんが付いてくれてるんで、かぶる前に仕掛けようと思った。気配がしたので踏みました。すんなりの展開でしたけどね。いい経験はできました。次につながるかなと思います」