魅せた、輪界一の豪脚
思惑通りの展開に持ち込んだ4車の近畿ラインを新田ひとりで粉砕。次元の違うまくりで、日本に敵なしをアピールした。
見る者に衝撃を与えた新田のパフォーマンスだったが、優勝会見でも驚きの振り返りだった。
「想定していた最高の展開。あとは出し惜しみしないように」
赤板2角過ぎから古性が、先頭に立って主導権を握る。村上義、村上博、椎木尾まで出切って、流れは数で上回る近畿勢。原田と吉澤が併走も、新田は最終ホームで8番手。村上兄弟、平原ら名だたるレーサーを前に見ながら、新田にとっての“Vポジション”で余裕をもってじっくりと構えた。
「理想の位置だったんで、(自力でに転じた平原を)乗り越えられたら、勝利があるかもしれないって思った。あとはゴールまでしっかり走りました」
シリーズを4戦3勝での優勝も、勝ち上がりでの2勝はともにラインを引き込めなかった。その結果が、ファイナルでの単騎を招いた。
「初日から付いてくれた先輩たちに迷惑を掛けた結果(単騎)だった。だから(決勝は)頑張ってる姿を見てもらって、また次の舞台で一緒に頑張りたいっていうのがありました」
個の力で圧倒した新田だが、北日本の仲間たちの大切さを感じながら優勝をかみ締める。
「すごく充実している。このあと世界選に向けてすぐにトレーニングをしていく。いまのままでは、世界に通用しないのわかっている。ちょっとずつ世界の舞台で活躍できるようになっていきたい」
アメリカでのナショナルチーム合宿から帰国して、昨年のグランプリ以来の競輪でもぎ取ったV。すぐに2月28日からオランダで始まる世界選手権大会に向けて競技のトレーニングを再開する。
「今年はオリンピックの(競技の)ポイントが始まる年なので、早い段階でグランプリの出場権を獲得しておきたいなっていう気持ちがあった。競輪の舞台に立つ機会が、今年から少なくなっていくんじゃないかなと思います」
新田がナショナルチームでのトレーニング、競技大会を経るたびに、さらなるパワーを手に入れてきた。最後の一冠、寬仁親王牌を残しグランドスラムに王手かけ、東京五輪までノンストップ。昨年のMVP男の進化は、周りの想像をはるかに越えている。
競輪の常識を覆す驚異的なパワーで新田に優勝をさらわれた近畿勢。ラインの競輪で絆の強さを示したが、優勝に手が届かなかった。村上義は、悔しさを隠せない。
「自分もあれ以上のことはできないし、優作も(村上)博幸もそうだと思う。4人が自分の位置でお互いのことを思いながら走って、それを力で(新田に優勝を)持っていかれたわけだから自分自身の大きな課題です。現状の自分たちと新田との差です…」
村上博は、兄の義弘の後ろで持てる技と力の出し尽くした。
「内、外を気にしながら2回もっていって脚が残ってなかった」
近畿2段駆けで吉澤は不発。自力に転じた平原の仕掛けはワンテンポ遅れて、村上博のブロックに力尽きた。
「(最終)2コーナーでなにも考えずに(仕掛けて)行ければいいんですけど。それはできないですから」
古性は果敢に主導権を奪い、ラインをチャンスメイクした。
「いつも通り冷静に走れた。それは大きいですね。ラインが生きるようにと思ってたけど、自分の力不足です。もうちょっと長い距離をモガければいいんですけど…」