仰天の記念初V‼
記念とは思えぬほどの“超”がつく豪華なメンバー。9人のなかでただひとり、グレードレース優勝経験がなかった和田が、あっと驚く3番手突き抜けで記念初V。大番狂わせを演じた。
「俺だけでしょ、獲ってないのは(笑)」。メンバーが出そろった決勝前日に、こう口を開いた和田に気負いはなかった。今シリーズの動きが光っていた新山に、番手は数々の修羅場をくぐり抜けてきた成田。和田は迷わず3番手でチャンスを待った。
「ラインのみんなでいいレースができればっていうのがあった」
逃げる新山の掛かりがいい。迫る三谷を張りながら、和田が外に持ち出して直線勝負。番手でもがく成田をよそに先頭でゴールした和田が、拳を突き上げた。
「成田さんを後ろから抜いたのは初めてじゃないですか。うれしいですね。それでもまさか突き抜けるとは。3番手だから、もう前を抜くしかないじゃないですか」
在校45位もデビューからセンスが光っていた。1年半でS級レーサーの仲間入りを果たし、その後は追い込みに転向。8度目の記念決勝で、優勝をつかんだ。
「100回のうちの1回が来ましたね(笑)。あそこ(3番手)が定位置なんで、そこを極めます」
無欲の3番手から大物食い。東北の“ミスター伏兵”に遅き春が訪れた。
三谷に乗った井上が、直線でコースを探して伸びるも2着まで。
「突っ込んだ時に1回、ちゅうちょしている。ワンポイント早く行っていれば…」
外の平原にかぶっていた新山だったが、一瞬空いた隙を突いて反撃。主導権を奪い、和田の記念初Vに貢献して、3着に粘り込んだ。
「平原さんの車輪が見えたんですけど、(外が)空いていると思って出て行った」
新山の番手で願ってもないチャンスが訪れた成田だったが、新山を交わせず伸びを欠いた。
「新山はよく行った。うまかったですね。自分は力不足です」
「まったく読み違いでした」の平原は脚を余して終わった。
「8番手に置かれたことがダメじゃない。そのあとに踏めれば…。この悔しい気持ちを維持して、ダービーの大きいところで」