22年目の春
「圧倒的な劣等感があった。それは僕が一番感じていた」
昨年、グランプリの舞台に上がり、今年は輪界の最高ランク、S級S班に身を置いた。ほかのS班8人にビッグ優勝の実績があるのに対して、桑原は記念での優勝も未経験だった。
「グランプリに乗った時も、ドッキリじゃないかと(笑)。いまもフワフワした感じがある」
同地区の松浦とは初日、準決に次いでシリーズ3度目のタッグ。全幅の信頼を寄せた松浦が、桑原にチャンスを運んできた。
「(松浦は)今回は自信がありそうだった。だから(松浦に任せて)いいゴール勝負ができるかと」
先行の腹を固めていた松浦だったが、その上を竹内が叩くと飛び付いて番手を奪う。桑原はしっかり、松浦に食らいついた。
「(松浦は)1コーナーでここ(番手)なのかなと。だから、その後ろは絶対に死守しなきゃ」
竹内を射程圏に入れた松浦が直線半ばで交わすと、その外を桑原が追い込む。山崎の猛襲を半車輪抑えたところがゴールだった。
「一生懸命やってきた結果が去年に出て、いい思いをさせてもらっている。(ファンから)よくやったって言ってもらえるとうれしいですね。もうちょっと頑張れそうな気がします」
デビューから21年での記念初V。派手さこそないものの、玄人受けする仕事ぶりで、これからも中四国地区を支えていく。
山賀をすくって和田に続いた山崎は、和田の上をさらにまくり追い込んで桑原に迫った。
「詰まってしまって、山賀をどかすしかかなった。(和田)真久留のところまで行けてれば」
松浦は瞬時の判断で、竹内の番手に作戦変更。坂口を弾くと、竹内との車間を詰めて追い込んだ。
「自分が特別競輪(G1)に出始めてから、桑原さんが一番親身になってくれて、自分を育ててくれた。ここまで来られたのも、桑原さんのおかげです。もう(最終)ホームだったし、駆けるつもりで踏んだら、竹内さんが来たのがわかった。あそこじゃ引けなかった」
思いのほか遅い仕掛けになった竹内は、こう振り返る。
「自信のなさが、そのままレースに出てしまった…」