ピンチで光ったキメ脚
ゴールしても優勝の実感はなかった。敢闘門で待っていた近畿の選手たちに自分を指さして確認したほどだ。引き揚げてきた村上は開口一番「まさかでした」と目を丸くする。
「展開が遅くなるようならハコも考えてたけどね。(吉田が竹内を)合わせてくれるようなら、やり合ったとこを(まくろう)と思ったら7番手になって最悪やと思った。ホームでは独り言のように『最低や』って(苦笑)」
4年ぶりのS班として迎えた2019年は村上にとって挑戦の年だ。「1回目に(S班に)なった10年前とは心境が違う。チャンスがあるという感覚よりも逆に色々試して。壁にぶち当たるだろうし、ぶち破る準備をしてる」と初日のレース後に話していた。ピッチの早い今の競走形態に対応するために、磨きをかけたタテの脚が決勝戦で爆発した。
「こんな記念の決勝で出るとは思わなかったけど、色んなトレーニングをした成果が出たと思う。今回は4日間練習でやったことをレースで確認作業してた。自信になると言うより、まさかです」
次節は2月8日から別府競輪場で開催される全日本選抜。今年最初のG1でも村上のタテ脚が輝きを放つ。
バックで最後方に置かれた野田だったが、3コーナー過ぎからインを突くと浅井とのG前争いを制した。
「(吉田が)突っ張り切って、合わせ切るのか微妙だった。あそこはスイッチできない。なるべくサラ脚で回りたかったし、もう自分の位置からだと外は届かない。何回か内が空いたけど、神田君もいたし、(村上が)仕掛けるまで待った。浅井君が気づいた感じだったけど、竹内君が(内に)逃げたんで自分のコースはあった」
浅井にとっては内に切り込んでくる選手がいることが想定外だった。
「(番手から)出ることはそんなに考えてなかったし、吉田君のスピードがイマイチなかったので止まるなと思った。舛井さんもいるし内に来られることはないと思ってたんですけどね。(野田に入って来られて)内に気を取られたところを、そのうえ来られてしまいましたね」
吉田を強引に叩いて主導権を握った竹内だが「浅井さんがあれだけ仕事してくれて残れてないんで。本当はそこからだと思うのに出て終わってる」。末を欠いて9着の結果に表情は硬かった。