• 第34回全日本選抜競輪2/8〜2/11

後記 GⅠ 別府 02/08

復興を遂げるその日までは

中川誠一郎

中川誠一郎

決勝優勝写真
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 メキメキと頭角を現してきた山崎賢、昨年グランプリ争いを繰り広げた山田英をはじめ、地元地区のG1に戦力を整えてきた九州勢だったが、準決を前に中川を残して九州勢は全員が敗退。中川だけがサバイバルシリーズを勝ち抜き、ただひとり決勝に進んだ。
 「ちょっと考えたんですけど、自分でやろうかなと思います」
 前日の決勝共同インタビューでは、例によって笑みを浮かべながら自力を宣言。迷いを断ち切って持ち前のパワーを爆発させた中川に、ラインという援軍は必要なかった。
 「もっと吉澤君が誰にも主導権を渡さないっていう感じかと思った。そしたら思いのほか、ペースに入れた。ちょうど(和田)真久留と併走になったんで、そこで(仕掛ける)腹をくくりました」
 打鐘で出た吉澤ラインを追った中川は、イン切りから下げた和田と4番手を併走。位置取り勝負との選択に迫られたが、単騎でも強気に前団に襲い掛かった。
 「準決で1周行ってたので、それよりは落ち着いて(最終)4コーナーを回ってこられました。ただ、ゴール後も(佐藤)慎太郎さんに抜かれたのかわからなかった。1周回ってスロー(VTR)を見た時に残ってたので、ちょっと遅れてガッツポーズしました」
 常識を覆す“ひとり旅”で逃走劇を完結。16年のダービー以来、2度目のG1制覇をまたも単騎で遂げた。
 「そう(G1は2度獲って一人前と)言われたので、これで一人前になれたんだと思います。すさんでいたというか、やる気がなくなっていた時期もあったんですけど。1年ぐらい前からですかね、もう競輪人生も長くないと思うので、もう1回やってみようと。(昨年の)2月ぐらいから(本格的にトレーニングを)始めた」
 昨年4月に一度は追い込み宣言をしたものの、天が与えた才能が自力を捨てることを許さなかった。単騎での逃げ切りでタイトル奪取が何よりの証だ。
 「やっぱり、そこ(熊本競輪場)を走ってこそ復興と言い続けているので、そこを走るまではなんとか上で、維持して頑張りたい」
 21年末に400バンクに生まれ変わっての再開が、見込まれている熊本のホームバンク。それまでは…。6月に不惑を迎える中川には、すでに自力の迷いはないだろう。
中割りにかけた佐藤
 茨城コンビの後ろから中を割った佐藤だが、粘る中川まではとらえることができなかった。
 「バランスを崩したというより、吉澤がまだ空けてなかったから、空くまで待ってその間だった。だからタイミングがちょっと遅れましたね。当たって空けたら失格。空くまで待たなきゃいけないんでしょうがない」
 単騎でカマした中川を抜ければ優勝だった吉澤だったが、もはやその力は残っていなかった。
 「(最終)バックでケツを上げて、なんとか追っかけたけど全然でした。まったく余裕がなかった」
 吉澤マークから直線で外を踏んだ武田は、香川との接触もあって伸び切れなかった。
 「吉澤も(最終)ホームで流しているわけじゃなく、ちゃんと踏んでいる。ただ、中川君の脚力が、2段階も3段階も上をいっている。(吉澤と)2人でまともなレースができたし、慎太郎君もラインに参加してくれたけど甘くなかった」
 中川のカマシは予想だにしなかった松浦は、前が遠かった。
 「4番手併走を期待してたけど、カマシは想定外でしたね。今回はなにもできてない。今度はなにかできるようにしっかり準備したい」

Race Playback

レース展開8
打鐘主導権の吉澤に武田、佐藤が続く単騎でカマした中川が出切って吉澤が追う佐藤の強襲を凌いだ中川が先頭でゴール

レース経過

誘導員 : 小岩大介

 号砲で武田が勢いよく出て、目標の吉澤を迎え入れる。初手の並びは吉澤-武田-佐藤、中川、松浦-香川-小倉、和田、吉田の順で落ち着き、周回を重ねる。 青板周回の2センターから上昇した松浦は赤板で誘導員の後位に収まる。松浦とほぼ同時に最後方から踏み上げた単騎の吉田は1コーナーで誘導員を下ろして前に出る。単騎の和田が2コーナーから踏み上げると、これを追う形から吉澤が仕掛けて打鐘で先頭に立つ。吉澤ラインを追いかけた中川は和田との4番手外併走を嫌って、4コーナーからカマシを打つ。吉澤も合わせて踏み込むが、中川が1コーナーで出切って快調に飛ばす。車間の空いた2番手で吉澤が前を懸命に追いかける。6番手となった松浦は2コーナー過ぎからまくり上げるが、車は思うように進まない。最後まで力強く踏み切った中川が逃げ切りで2度目のG1制覇を果たした。関東コンビ追走から最終2センターで内を突いた佐藤が直線で中川と吉澤の中を割って2着に。中川を追いかけた吉澤は3着。

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