松井宏佑が記念初優勝
レースは作戦どおり前受けから。2コーナー、7番手から踏み込んだ松井宏佑と前団とのスピード差は歴然だった。坂本貴史、浅井康太がまくって短くなった前団を直線でとらえると、岩本俊介の追撃も振り切った。
「(作戦は)前を取って引いて。遅く駆けてたら、そこを叩いて先行しようと思ったけど、昨日(準決勝を2コーナーまくりで快勝)のイメージ、その感覚で行ってもラインで決められるかなと。でも簗田(一輝)君と決められなかったのは申し訳ない」
ナショナルチームでも活躍する松井は今年11月にベラルーシで開催されたワールドカップのケイリンで銅メダルを獲得。「そこから勢いに乗ってくれた」と話すように、競輪祭では一次予選で敗れたものの敗者戦を3連勝。いい流れでこの大会を迎えていた。
「ワールドカップ1戦目でのメダルは大きかったですね。競輪祭も最後良かったので、その流れで来れて良かった。記念を獲ったので、特別でも結果を残していかないと」
宮本隼輔に先を越されたがデビューから1年5カ月での記念優勝に「早かったですね」と笑顔を見せた。次節は12月29日に立川競輪場で開催されるヤンググランプリ。「優勝目指して頑張るしかないです。ちょっと休みたいけど、伊豆に帰って明日の朝から練習します」。宮本ら同期6人が集うレースでも、そのスピードを遺憾なく発揮する。
岩本俊介は松井のスピードに離れることなく続いた。
「松っちゃん(松井)は前(受け)で力を試したいと言ってたし、絶対、番手で離れんぞと思ってた。あんまり(人の)後ろは慣れてないんで(前の様子は)分からなかったけど、松ちゃんは力があるので。松ちゃんが突き抜けたと思ったし、僕もあとは惰力で行っただけ。連係が決まってうれしいし、松ちゃんが力を発揮できて良かったです」
3着の稲垣裕之は「(松井が)狙ってましたね」と苦笑い。前で稲毛健太が頑張ったレースを感慨深げに振り返った。
「稲毛が2車でも先行っていうね。坂本(貴史)君をアテにせず出て行ったところなんて、強くなったなと思いました。松井の前に浅井(康太)も見えてたし、とりあえず振らないと。(松井に対応するのは)厳しかった。勝負は負けたけど、(稲毛が)いいレースをしてくれたと思う。また自分のやれることを磨いていきたいなと思います」
単騎の木暮安由は逃げる近畿勢の後ろという絶好のポジションにつけたが、浅井の先まくりにかぶってしまった。
「おいしいなと思って見てたら、欲をかきすぎたです。バックで行けたら面白かったと思うけどね。(競輪祭から中4日で、その間には地区プロも)すごい忙しいスケジュールで連にからめた。しっかり調整してくれば、(今後は)面白いかなと思います」
松井との力勝負を覚悟していた稲毛健太にとっては肩すかしを食うレース展開となってしまった。
「(松井が)ホームで絶対来ると思ったけど…。勝ちにいって負けるのもアレやと思ったんで。でも、結局(松井は)最後まくり追い込みみたいな感じだったから。直線で来られたら稲垣さんも無理。スパーンってまくられたら、やっぱ強いなと思うんでしょうけど、(踏み合いも)全然なかったしね」